2018 Fiscal Year Annual Research Report
Agglomeration and spatial economy: Reconstruction of theoretical and empirical framework
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17H00987
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 知也 京都大学, 経済研究所, 教授 (70283679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 実 東北大学, 工学研究科, 助教 (50793709)
赤松 隆 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (90262964)
高山 雄貴 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (90612648)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経済集積 / 都市形成 / 秩序形成 / 階層構造 / フラクタル / 地域経済圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市集積の形成の人口規模・空間パターン・産業構造における秩序形成に関する理論分析枠組・手法の開発及び応用、数値解析・実証分析について、以下の成果を得た。 理論分析:(1) 集積の経済を持つ産業が1種類の場合について、2次元立地空間における都市形成分析を行ない、輸送費用の変化による分岐パターンが、1次元空間の場合と本質的に同じであることを示した。(2) 通勤を伴う都心形成理論モデルに対し、ポテンシャルゲーム理論を用いた解析手法を構築し、交通費用の低下が安定均衡における都心数を減少させることを示した。(3) 米国の貿易データから推定した1万財以上の需要の価格弾力性値を多地域・多産業を含む経済集積理論モデルに適用し、大型計算機を使用して安定均衡のランダム標本生成を行ない、予定の標本数の蓄積を完了した。 実証分析:(i) (3)の理論モデルに基づく構造的重力モデルを用いた地域経済圏の同定手法を開発し、日本の物流センサスを用いてその精度を実証した。特に、地域間の産業構造の違いを考慮しない一般的な重力モデルによる都市間貿易の推定量が、(3)の理論モデルと整合的な系統的バイアスを生むことを示した。 (ii) 日本・米国・欧州・中国・インドについて1kmメッシュデータから都市集積を検出し、(3)の理論分析に対応する実証分析用データを整備した。更に、日本については、産業立地・国勢調査等のデータを加え、都市規模と産業構造に関する秩序形成について基礎事実を明らかにした。 (iii) 大都市に極端に集積する研究開発活動について、特許公表データを用いて、その生産性の決定メカニズムの実証分析を行なった。新鮮な知識の多様性の維持が重要であり、研究者間の協力関係の頻繁な組換えの可能性が生産性に寄与することを示し、地域経済における最大都市への極端な経済集積の背景メカニズムの一部を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、昨年度までに蓄積した多地域・多産業経済集積モデルを用いた安定均衡のランダム標本を用いて、都市規模分布・空間パターン・産業構造に関する秩序形成の理論モデルによる再現性の検証を開始する予定であったが、計画分の標本の蓄積を優先させた。他方で、都市形成の基礎理論の構築及び、実証分析において、当初の計画より一般的な設定で分析を進め、新たな結果を得た。また、国を始めとする地域経済における最大都市へ極端な経済集積の背景メカニズムとして、知識創造活動に関するミクロ実証分析を行った。以上、計画当初の分析順序を若干修正した点、及び、計算機資源確保のための予算の減額に対して、計画当初より一般的な理論結果を得る試みにより多くの時間を配分した点以外は、順調に研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
実経済においては、階層的な地域経済圏が形成され、都市の規模分布・形成パターンは、空間的フラクタル構造を持つことが、本研究のこれまでの分析から明らかになっている。特に、異なる地域経済圏で、都市規模分布は共通のべき乗則に従い、産業が立地する都市の数と平均規模も相似の対数線形関係を持つ。来年度以降は、森・高山が、理論・実証分析ともに、これらの秩序形成に関わる成果を中心にまとめる。一方で、赤松・大澤は、都市内・都市間空間の理論的な接続について理論分析を進める。 特に、秩序形成に関する実証研究では、都市規模分布・空間パターンについて、昨年度までに準備した日本・米国・欧州・中国・インドのデータを用いて実証する。但し、これらについては、貿易データ等を用いた構造的に特定された地域経済圏ではなく、近接性に基づく簡易な地域パーティションを用いる。日本については、昨年度に開発した手法を用いて構造的に同定した地域経済圏の下で、産業構造に関わる秩序形成も含めた分析を行う。 理論研究では、多地域・多産業経済集積モデルを用いて昨年度までに準備した安定均衡のブートストラップ標本を用いて、上の実証分析において示された秩序形成を始めとする実証事実が、安定均衡の一般的な性質であることを示す。
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Research Products
(33 results)