2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Effectiveness of Employment Measures and Anti-Discrimination Laws for the Elderly and the Disabled: How Human Behaviour in Organisations Can Influence the Outcomes of Government Policies
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17H01000
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Research Institution | Keiai University |
Principal Investigator |
高木 朋代 敬愛大学, 経済学部, 教授 (20383367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥後 裕輝 九州大学, 留学生センター, 教授 (80748153)
金子 能宏 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (30224611)
水町 勇一郎 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20239255)
山田 篤裕 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (10348857)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高年齢者 / 障害者 / 雇用政策 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年国際社会では、高年齢者・障害者雇用において、差別禁止法に基づく政策への収斂が起きている。だが、先駆国においてでさえ、同法の効果に懐疑的な研究報告がある。本研究の目的は、何が法や政策の効果を促進あるいは減退させるのかを、国際比較研究により探究し、差別是正と雇用促進の道筋を理論的・実証的に導くことにある。 この課題に対し本研究は、国際社会の潮流とは逆流するが、「活躍する高年齢者・障害者の姿が具体的に示される→人々の中にある差別意識の希薄化→さらなる雇用拡大」という循環があると仮定する。当初の研究計画に基づき2年目の2018年度は、昨年に引き続き、現状把握および理論構築のための文献調査を行い、日本および対象国のヒアリング調査を行うとともに、一般統計調査の二次データ分析を行った。なお、これらの調査・分析は、2019年度に行う企業を対象とする国際比較サーベイ調査、また2020年度に行う個人を対象とする国際比較サーベイ調査のための、作業仮説を構築するプロセスでもある。 調査研究の途中ではあるが、本年度の分析・考察から、先に示す本研究の仮定は、差別是正と雇用促進を拓く現実的な道筋であるとの確信を得た。また、他国と比較しても日本が推進してきた「結果の平等」政策は評価されるべき点が多いこと、そして、さらなる雇用促進のためには、今後行政が果たすべき役割は大きいこと、しかし同時に、真に高年齢者・障害者等の多様な人々を包摂する社会の実現のためには、社会および企業が解決しなければならない課題や配慮すべき問題が多く残されていることを見出した。特に、雇用の主要な受け皿である企業の人事管理、および、組織における人間行動に着目し、人々の思考、心理、行動というミクロの集積がマクロを形成していることを念頭に入れ、政策策定においては複雑な人間行動を観察し、その特質を織り込むことが重要との認識を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は目的を達成するために、次の3つの調査課題を設定している。1)各国の歴史・文化・社会・経済・政治の諸特徴と雇用政策・差別禁止法の効果との関係分析、2)各国企業の人事管理および組織における人間行動が、雇用政策・差別禁止法の効果に与える影響分析、3)雇用の進展と人々の差別意識の変化との関係分析。また、上述の各課題に接近するために、次の手続きを定めている。a)関連文献を渉猟し、本課題の理論的・歴史的背景を明らかにし、政府公開資料や各種調査資料等から、各国の法と政策、各国企業の制度と雇用の現状を把握する。b)調査対象国の当事者、家族、支援団体、企業等使用者、同僚・上司、労働組合、学校等へヒアリング調査を行い、定性的に調査・分析を行う。c)経済学的・計量社会学的分析手法を応用して、公表データの二次分析を行い、定量的に調査・分析を行う。d)調査対象国の企業を対象とする国際比較サーベイ調査、個人を対象とする国際比較サーベイ調査を行い、これまでの調査・分析の結果を含めて、考察を深める。e)各年度で学会報告や学術論文等により発表し、最終的に研究成果を書籍にまとめる。 このように定めた調査研究の手続きに対し、2年目の2018年度は当初の予定通りに、昨年に引き続き、現状把握および理論構築のための文献調査を行い、日本および対象国のヒアリング調査を行うとともに、一般統計調査の二次データ分析を行った。また、学会報告や学術論文の発表を行い、書籍出版の準備を進めた。その結果、最初に定めた目標を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
先に記した調査研究の手続きに従い、引き続き、現状把握および理論構築のための文献調査を行い、日本および対象国のヒアリング調査を続けるとともに、調査対象国の企業を対象とする国際比較サーベイ調査を行う。また2020年度に行う、個人を対象とする国際比較サーベイ調査の準備とともに、引き続き、書籍出版の準備を進める。また、学会報告や学術論文の発表を随時行う。
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