2017 Fiscal Year Annual Research Report
Birdsong reward system: the relationship between intrinsic and extrinsic motivations
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17H01015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡ノ谷 一夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30211121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和多 和宏 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (70451408)
関 義正 愛知大学, 文学部, 准教授 (50575123)
池渕 万季 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (20398994)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歌学習 / 動機づけ / 中脳腹側被蓋野 / 中脳黒質緻密部 / 電気生理学 / 神経細胞 / 発声 / ドパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、動機づけの実体を脳神経活動の側面から明らかにすることである。このために鳴禽類(キンカチョウ、ジュウシマツ、ブンチョウ)の発声行動に着目し、中脳ドパミン神経系が発声の動機づけに関わる可能性を検証した。 平成29年度は、行動中の小鳥において中脳の腹側被蓋野VTAと黒質SNの神経活動計測の技術をまず確立した。麻酔下において神経活動計測と色素注入をおこない、チロシン水酸化酵素(TH)免疫組織化学と組み合わせることでVTAとSNに対して精度高く電極を刺入することができる座標を決定した。 次に、この座標を用いて16本のワイヤ電極を慢性的に埋め込み、自由行動中の幼鳥のVTA/SNから同時に複数の単一ニューロン活動を長時間安定に記録する技術を確立した。この手法により、幼鳥が内発的動機づけに基づいて自発的に「無志向歌」を発声する際の神経活動を計測した。 その結果、幼鳥の発声開始に先行して一過的な活動の上昇を示す一群のニューロンを見出した。このニューロンは最初の歌要素に約50ミリ秒先行して活動を上昇させるが、2番目以降の歌要素が生成され始めると発火頻度は自発発火レベルへ急速に低下した。自発発火が顕著に高い別のニューロン群においては、発声開始時点で一過的に活動を停止するニューロンも見つかった。 これらより、VTA/SNが自発的な歌の開始信号を生成することを示唆する生理学的証拠を得た。運動学習期に幼鳥が歌を練習する際、幼鳥は外部からの刺激を受けることなく自発的に無志向歌を開始する。発声の内発的動機づけ生成過程の最終段階で、中脳ドパミン神経が運動系に対して開始信号を送ることで発声が誘起されることを示唆する知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、腹側被蓋野VTAと黒質SNに電極を精度良く埋め込むための座標を最初に決定した。これに基づきVTA/SNからニューロン活動を自由行動下において記録する方法も確立し、実際に発声開始に関わると考えられるニューロンの同定に成功した。従って、本研究は当初の計画通り順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は、引き続きVTA/SNの神経活動計測を続け、上記現象の再現性を確認する。 さらに、大脳基底核や運動野に刺激電極を埋め込み、逆行性電気刺激によって発声開始に関わると考えられるVTA/SNニューロンの投射先の同定を試みる。発声の開始に関わると考えられるニューロンが、発声に伴う頭部や体の運動でも神経活動を変化させる可能性もある。加速度センサーを用いて運動を定量化し、運動開始と発声開始のどちらにより強く神経活動が相関するかを検討する。また、VTAとSNの間で自発的な発声開始に関わる細胞の割合や発声関連活動に違いが見られるかどうかを検討し、領域間の機能的差異を明らかにする。 記録している細胞がドパミンニューロンかGABAニューロンであるかを区別するために、神経活動計測中にドパミンアゴニストを腹腔内投与し自発発火頻度の変化を計測することで、ニューロンタイプの同定を試みる。 これら一連の実験を実施することで、幼鳥の発声学習を支える内発的動機づけの神経機構について新たな知見を得る。
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Research Products
(11 results)