2018 Fiscal Year Annual Research Report
Superposition of state of nonlinear oscillation on nano-electro-mechanical system consisting of atomic layer material
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17H01040
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
秋田 成司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60202529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野内 亮 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70452406)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グラフェン / 原子層膜 / ナノ電気機械 / ナノ機械共振器 / 振動の重ね合わせ |
Outline of Annual Research Achievements |
揺らぎのある非線形振動の重ね合わせの共鳴現象の実現を目指しH30年度は、主に要素技術である原子層膜NEMSの振動制御と2つの原子層NEMSの結合に関する研究を行った。 1.光誘起電荷による振動制御:これまでに報告のない半導体原子層膜NEMSで見出した光誘起電荷による振動制御に関して詳細に検討した。まず、光誘起キャリアの捕獲・放出過程による静電気力の緩和のもたらす振動状態への影響を検討した結果、キャリア捕獲時間が半導体原子膜では室温でも数十分にもおよぶため非線形振動によらないNEMSのメモリ動作が実現した。さらに、光照射により生成されたキャリアの緩和が機械的損失に変調を与えることを見出した。 2.2つの非線形機械振動の結合強度を変化できるNEMSの実現:振動子の境界条件の安定なドラム(太鼓)型の2つの原子層機械共振器を細い宙吊り原子層で橋渡しした構造を作製した。この構造では各々の振動が橋渡し部により伝搬し機械結合系となる。この場合、線形領域において2つの機械共振器が機械的に結合していることを確認した。さらに、非線形振動領域で共振が結合していることを確認した。結合強度を変化するために橋渡し部分の幅や長さを変化するだけでなく、光誘起熱効果による変調について検討した。 上記、機械的な結合に加えて電気的にフィードバック制御された2つの非線形振動NEMSを結合要素(位相、振幅、波形整形など)を介して結合し、機械的な結合と同様にそれぞれの結合強度を変化して振動状態を解析した。さらに、先に述べた光誘起電荷の捕獲・放出過程を利用した結合強度変化についても検討を進めた。 ※予期しない優れた結果:グラフェンとMoS2はそれぞれ負と正の熱膨張係数を持つ。この2種類の原子層薄膜の積層構造では見かけの熱膨張率がゼロ近くになる現象を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の概要に述べた通り原子層膜NEMSの振動制御と2つの原子層NEMSの結合に関して計画通りに進展している。この中で、当初の予期しない結果として、2種類の原子層薄膜の積層構造では見かけの熱膨張率がゼロ近くになる現象を見出した。これにより熱膨張の効果とその他の効果(電気的、光電的、機械的効果)との切り分けが可能となり新たな制御への展開が拓かれた。
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Strategy for Future Research Activity |
揺らぎのある非線形振動の重ね合わせの共鳴現象の実現を目指し本年度は、主に2つの原子層NEMSの結合と振動の重ね合わせによる共鳴現象に関する研究を行う。 1.2つの非線形機械振動の結合強度を変化できるNEMSの実現 昨年度の研究の中で振動の光誘起キャリアにより遅延項が光変調で実現できることを見出した。これにより、2つの結合したナノ機械共振器において振動状態が容易に独立に制御できることが明らかになった。これまで検討してきた電気的、熱的な方法に加えて上記の光誘起キャリアによる制御方法を加え検討を進める。 2.振動の重ね合わせによる共鳴現象の実現 各原子層NEMSを自励発振させた状態で検討をすすめ振動の重ね合わせによる共鳴現象の実現を図る。非線形振動している場合、同一周波数で2つの振幅を取ることができ、2値状態をもつ共振系と言える。これを自励発振させた場合、カオス的な振幅変動が起きる条件があることが知られている。ここでは、まず単一の原子層NEMSで自励発振が可能となる帰還条件を実現し、カオス発振が発現する条件を探索する。次に、2つの原子層NEMSを結合し、カオス発振時に結合強度を変化し各々の振幅の時間発展を取ることで、2つの独立した振動となる場合と、2つが協調する条件を見出す。上の検討課題も系自体にカオス発振が含まれるため、揺らぎが加えられた系と言えるが、ここでは、2つの結合関係に揺らぎ(周波数・位相・振幅の3条件)を加えることで系の安定状態を検討する。ここで加える揺らぎも自然界に存在する熱揺らぎを模擬したエネルギースペクトルを持つもの、上記、1つの原子層NEMSから発生する時間発展的にカオス的なものを重畳し、非線形振動子の結合系に与える影響を調べ、非線形振動の重ね合わせによる4つの安定状態を実現する。
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