2019 Fiscal Year Annual Research Report
高放射率な光メタ表面を核心要素とする超高感度・高安定分子検出システムの開発
Project/Area Number |
17H01066
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
岩長 祐伸 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (20361066)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メタ表面 / 蛍光センシング / バイオマーカー / 分子検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、独自に考案、実証した光放射率の高いメタ表面を活用して、超高感度かつ再現性の高い蛍光センシングシステムの開発を行っている。前年度までに蛍光センシングシステムにマイクロ流路を導入し、対象バイオ分子の定量的な制御を行うことが可能になった。 2019年度は、実施計画に沿って、バイオマーカー分子のさらなる高感度検出を進めた。本研究の核心要素であるメタ表面基板の検出性能の原理実証を主眼として、ターゲットバイオマーカー分子の直接検出実験を行った。マイクロ流路における液流条件の改良、マイクロ流路チップの形状改善など、複合的な努力の結果、最も典型的な抗体であるイミュノグロブリンG(IgG)を5 pg/mlの極低濃度においても検出に成功した。また、癌マーカー分子であるp53抗体を10 pg/mlオーダーの極低濃度においても検出できた。このように、本蛍光センシングシステムの検出性能は高いことを実証することができた。有用なメタ表面として、プラズモン・フォトンハイブリッド型と全誘電体型の2種類をこれまでに発見してきたが、いずれの型のメタ表面もこの高感度検出に有用であることを実験的に確認した。後者のほうが、より低コスト化につながるメタ表面である。これらの結果をもとに、特許出願1件を行った。 本研究課題に関連して、上記特許出願のほかに、2019年度内の成果発表は、国際共著論文発表1件、解説記事2件、招待講演5件(いずれも登壇)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の蛍光センシングシステムの高感度性に関する性能実証ができた点が主たる理由である。タンパク質分子の高精度な市場標準法であるELISA法では検出限界は、コンセンサスのある値として1 pM 程度であるが、本研究の手法は、30 fM においても検出に成功した。本研究の手法では、検出限界には達しておらず、これまでの進展だけでも1桁以上の高性能である。作業時間についても、ELISA法で4時間程度であるのに対して、本研究の手法は1時間以内であり、作業時間の短縮についても優位性を確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を通じて、巨大タンパク質からなるバイオマーカー分子(抗体)を高感度に検出する基本的な工程を固めることができた。よりよい固定法、条件を引き続き検証しながら、本検出システムの一層の高感度化を進める。 一方で、当初計画にあるマイクロRNA検出など、新規な対象の検出にも着手して、本蛍光センシングシステムの有用な選択肢を増やしていく方針である。この場合、ターゲット分子を捕捉するプローブは構造が相補的なDNAを用いることにより、特異的(対象選択的)な検出を担保する。
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