2019 Fiscal Year Annual Research Report
円偏光フェムト秒コヒーレント軟X線の発生と超高速スピンダイナミクスへの展開
Project/Area Number |
17H01067
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 栄治 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 専任研究員 (80360577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 光紀 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (40375168)
菊池 伸明 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80436170)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 量子エレクトロニクス / スピントロニクス / 高次高調波 / コヒーレント軟X線 / アト秒科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い,磁性体観察ビームラインの設計,構築を進めた.中赤外・超短パルスレーザーシステムにより発生した 200 eV を超える軟 X 線ビームに対して,分散がのらない(フェムト秒のパルス幅が保たれる)観測装置を実現するため、反射光学系のみを用いたビームラインを構築を行った.高調波発生では軟X線ビームと強力な励起レーザーが同一光軸上を伝搬するため,サンプル照射前に二つのビームの空間分離を行う必要がある.そこで軟 X 線多層膜ミラー技術を駆使し,斜入射光学系において励起レーザーを 10% 以下に減衰させつつ,軟 X 線ビームに対して 70 % を超える反射率を実現できるをダイクロイックミラーを設計・導入した.軟 X 線域で動作する本ダイクロイックミラーにより,励起光を金属フィルーが導入可能な強度まで十分に減衰できる.さらに,ダイクロイックミラーを空間的に分割することにより,軟 X 線を自分割する光学系も構築した.自分割測定系により,フェムト秒軟 X 線パルスによるポンプ・プローブ計測の実施も可能となっている.今後,サンプルを導入するチャンバーの構築を行う予定である. 円偏光高調波発生においては,当初,逆回り円偏光パルスを非共軸にて焦点距離数メートルのレンズでターゲットガスへ集光して発生を行う予定であった.しかしながらこれまでの実験から高光子エネルギー域において逆回り円偏光軟 X ビームの取り出しに技術的な困難性があることが判明した.その為,共軸タイプの新しい円偏光高調波発生法の検討を行い,極端紫外域において円偏光高調波の発生を確認した.発生する高調波スペクトルが励起レーザーの偏光度に強く依存する事が実験から確かめられた為,円偏光生成用の1/4波長板の帯域や面精度の検討を行った.今後,発生波長を軟X線域に拡大させていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画通り,高調波ビームを応用する為のビームラインの構築を完了した.一方で,非共軸集光を用いた円偏光高調波発生において逆回り成分を持つ円偏光ビームが高光子エネルギーになるほど空間的に密接する(空間分離が難しい)ことが判明した.当初計画では分離が可能と判断したが,高調波を高効率に発生する事を優先した集光光学系構築の制限により別の発生手法の開発に取り組まざるえなくなった.このような理由により本研究の最終目標を達成するための発生手法開発に遅延がでていることから,やや遅れていると考える.ただ高調波の高効率発生が可能な系としているので,当初予定より高出力の円偏光高次高調波光源が実現できる可能性もあり,今後当初の予定以上の成果が得られる可能性は十分にある.
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Strategy for Future Research Activity |
軟 X 線ビームラインにおいては,ターゲットを設置するための真空チャンバーの設計と導入を進める.分光対象として固体・気体だけでなく液相への軟 X 線利用も検討して装置設計を行う.円偏光高次高調波においては,共軸発生手法の最適化,および短波長化法を開発する.その際,円偏光高次高調波光源の波長チューニング性も併せて実現する予定である.
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