2018 Fiscal Year Annual Research Report
Multi-scale/multi-physics modeling for particle/fluid coupling system and its applications
Project/Area Number |
17H01083
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 量一 京都大学, 工学研究科, 教授 (10263401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 修悟 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (70456797)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 混相流 / シミュレーション / コロイド / 流体力学 / ソフトマター |
Outline of Annual Research Achievements |
ソフトマターは機能性材料の宝庫であるが,その複雑なマルチスケール性のため,分子動力学法や計算流体力学法など既存のシミュレーション法単独での適用が困難である.本研究では,後述する具体的な研究項目に対して,ミクロ階層を統計力学的手法によってメソ・マクロ階層に効率よく反映する粗視化モデリングや,同様のことを数値的に反映するマルチスケール・マルチフィジックスモデリングを適用することで,この問題の解決に取り組んでいる.さらに,最新の計算機(GPGPUや次世代スパコン等)を併用することにより,この技術を工学的応用問題に展開し,計算科学による次世代の材料・プロセス設計技術として広く一般化を目指している.申請段階で想定した以下の3つの研究項目について,平成30年度はそれぞれ以下の成果を得ることに成功した. 研究項目1.ナノ微粒子分散系のダイナミクス: 1)ナノ粒子が分散した相分離液体系に対してモデリング手法を拡張し,液体とナノ粒子の親和性の違いやせん断流の影響による粒子分散挙動のシミュレーションに成功した. 2)荷電コロイド粒子が交流電場下で鎖状構造を形成するメカニズムを明らかにした. 研究項目2.コロイドガラス系のダイナミクス: 1)大規模系計算の実現に向けて,コロイド分散系の直接数値計算手法において既存のOMP並列化に加えてMPI並列化に成功した. 2)1つの細胞を2つの円盤で表現する最小モデルを用いて,細胞コロニーが基板上で成長する力学的メカニズムを明らかにした. 研究項目3.アクティブ粒子系のダイナミクス: 1)これまでのPusher/Puller型のマイクロスイマーに加えて,回転運動(Rotlet項)を持つマイクロスイマーのシミュレーションに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
シミュレーション技術から見たソフトマターの特殊性は,そのほとんどがマルチスケール・マルチフィジックスの連成系となっていることにある.例えば,高分子系では巨大分子間にからみあいが発生するために,系のダイナミクスは分子スケールから流体スケールまで著しく広く分布する.コロイドも同様で,周囲の流体やイオン雰囲気による長距離相互作用のために,非常に遅いダイナミクスが系の性質を決定する.このような広い時空間スケールを通常の分子シミュレーションや流体シミュレーションで扱うことは出来ないので,ソフトマター分野では,他の分野に先駆けて粗視化モデリングが発展した.しかしこれまでの粗視化モデリングでは,系の普遍的な挙動にのみ重点が置かれるあまり,物質の個性は非常に大ざっぱなパラメーターに押し込められており,物質のミクロな情報からそのパラメーターを決める処方箋がなかった.本研究で挙げた具体的研究項目は,いすれもソフトマター材料自身,あるいはソフトマター材料と外部との連携で,マルチスケール・マルチフィジックスの連成系となる難しい問題を含んであり,有効なシミュレーションを行うためにはその系のミクロな自由度/メソスケールの自由度/マクロな自由度間の関係を正しく理解し,定式化することが必要である.非常に意欲的な研究提案であるにもかかわらず,すでにモデルの構築に成功しているだけではなく研究成果を複数の論文として出版し,さらにはシミュレーションソフトウェアの開発や一般公開も実施済みであることから,本研究は当初の計画以上に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では,平成29年度は研究項目1を優先して実施し,平成30年度以降に研究項目2,3に本格的に取り組む予定であった.しかし,平成29年度には研究項目3が予想以上に進展したため,その部分について優先的に実施した.平成30年度には研究項目1, 2, 3のほか,「新規シミュレーション技術の確立とシミュレーターの開発」及び「次世代スパコンでのマルチスケールシミュレーションの実施」についても大きな進展があった.各研究項目は相互に関連しつつもほぼ独立して実施することが可能であるため,必ずしも計画通りの順序で進める必要はないが,現時点で想定している推進方策は以下のとおりである. 研究項目1.ナノ微粒子分散系のダイナミクス:多成分混相流のマルチスケール・マルチフィジックスモデリングを完了し,粒子分散挙動や流動挙動を明らかにするとともに,シミュレーションソフトウェアの開発と一般公開を行う. 研究項目2.1)コロイドガラス系のダイナミクス:大規模系計算の実現に向けて,引き続きコロイド分散系の直接数値計算手法の高速化に取り組むとともに,並列化シミュレーションソフトウェアの開発と一般公開を実現する. 2)これまでの基板上の細胞(2次元)のモデリングに加えて,組織を構成する細胞(3次元)のモデリングに取り組む. 研究項目3.アクティブ粒子系のダイナミクス:泳動粒子について,これまで考慮されてこなかった回転運動をあらわに考慮した直接数値計算を実現した.今後はそれらの共同運動について研究を進める.
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