2018 Fiscal Year Annual Research Report
nderstanding the formation mechanisms of compact objects from multi-dimensional stellar evolution history
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17H01130
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
固武 慶 福岡大学, 理学部, 教授 (20435506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝脇 知也 国立天文台, 理論研究部, 助教 (50507837)
梅田 秀之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60447357)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多次元恒星進化 / 超新星爆発 / スーパーコンピューティング / 元素合成 / ニュートリノ / 重力波 / 輻射流体 / 中性子星 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度得られた研究業績のハイライトは以下の二点である。 1.本年度は予定していたように、空間3次元(3D)超新星親星モデルの構築に成功した(論文投稿済)。まず、太陽質量の10倍程度から40倍程度の親星に対して系統的な一次元球対称(1D)の進化計算を行い、爆発直前の酸素層における対流が最も大きく発達することが期待されるモデルを10程度選んだ。その1Dモデルを初期条件として、まず2次元軸対称(2D)の流体計算を行った。この目的のため、非一様メッシュを用いた流体コードと核燃焼ネットワークを合体させた新たなコード作成(3DnSEV)に成功した。このコードを用い2D計算を行った結果、爆発直前の酸素・シリコン層における対流が最も大きなモデル(25太陽質量 のモデル)を選ぶことが出来た。このモデルに対して、3D流体計算を行い、爆発直前の対流層の3D構造を明らかにすることが出来た。結果、3Dモデルでは2Dモデルに対して乱流強度が弱まるものの、空間的に大きな広がりを持つ非一様構造が現れることを明らかにすることが出来た。 2.LIGOやVirgoで初検出された重力波源として数十太陽質量をもつブラックホール連星が注目を浴びている。このブラックホールの起源として、低金属星の連星系が最有力候補の一つである。ブラックホール生成に伴う重力崩壊のメカニズムを明らかにするため、低金属・大質量星(70太陽質量)の一般相対論的重力崩壊のシミュレーションを実行した。結果、ブラックホール生成の前に、ニュートリノ駆動の衝撃波復活が起こることが分かった。衝撃波も最終的にはブラックホールに吸い込まれてしまうが、この一旦、衝撃波が復活した後にブラックホールが生成されるというのは、従来、遅延ブラックホール形成メカニズムとして提案されていたものであるが、今回初めて3Dシミュレーションで再現できたのが大きな成果であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の3つの観点から「おおむね順調に進展している」と判断した。 1. 当初予定していた通り、本研究課題のメインテーマである「3Dの進化モデルの構築」が行えたことから、現在までの進捗状況として「おおむね順調に進展している」と判断した。当初予期していない研究の広がりとして、爆発前の対流層から放射されるニュートリノ、いわゆる「超新星前兆ニュートリノ」に関する予備的な結果を得ることが出来たことである。上述の多次元流体計算では、ニュートリノ反応の取り扱いが近似的であるため、あくまで定性的な予測の域を出ないが、対流のタイムスケールと同じく、ニュートリノシグナルも変動することを指摘することが出来た。またガドリニウムを加えたスーパーカミオカンデや、計画されているハイパーカミオカンデにおける検出可能性についても議論することが出来た。現在は、対流渦が計算領域を数回往復する短いタイムスケールしかその動的進化が追えていないが、今後より長時間の流体計算を行うことで、対流に起因するシグナルがどれくらい続くか精査することが重要であり、その準備が着実に進んでいる。 2.当初の計画を超えた成果として、ニュートリノのカイラリティの効果を考慮した3Dの磁気流体シミュレーションに関する共同研究で開始できたことである。素粒子物理学の知見から、ニュートリノのカイラリティの破れを反映して、超新星コアにおける流体もいわゆるカイラル電磁流体として扱う必要性が指摘されていた。実際に数値シミュレーションを行った結果、小さなスケールから大きなスケールに磁場がカスケードしながら増幅されることが分かった。現在は、数値分解能の観点から増幅された小さなスケールがグローバルな中性子星の磁場にどのように成長していくか未解明であるが、今後の研究につながるテーマを発掘できたという観点からも、本課題を「順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)今後は、本年度の研究業績で述べた25太陽質量モデルに加え、他の質量・金属量を持つ親星についても3D進化計算を行い、対流層の3D構造の親星依存性を系統的に明らかにすることが重要である。さらに、上記の25太陽質量モデルを初期条件として、3D超新星シミュレーションを行う計画である。ニュートリノ輸送は、これまで用いてきたポストニュートン効果と最新のニュートリノ反応率を考慮したIDSA法を用いる。多次元進化モデルから得られたマッハ数の非一様性を基準値としながら、非一様性をパラメーターとしても扱い、非一様性が爆発メカニズムに与える影響を系統的に明らかにする計画である。また、爆発時に放射されるニュートリノ・重力波シグナルの特徴、観測可能性についても明らかにする計画である。 (2)初年度に計画していた通り、自転星の3D進化星モデリングにも着手している。研究方策は、無回転星と同じで、まず1Dモデルにおいて系統的に初期自転率、初期質量、金属量を変化させ、いわゆる化学組成一様進化(CHE)が起こるブランチにも注目しながら、高速自転星を系統的に構築する。その中から特徴的なモデルを選び2D、3D計算を実行し、自転の3D親星進化・構造におよぼす効果を精査する計画である。 2.上述の高速自転する初期モデルを用いて、ブラックホールを形成するような大質量星の重力崩壊のシミュレーションを行う計画である。LIGO, Virgoを始めとする重力波の初検出の後、数十太陽質量をもつブラックホール連星の起源を解き明かすことが喫緊の課題になっている。本テーマは、その意味でタイムリーで、本年度すでに査読論文としてまとめた無回転の親星に対して行った一般相対論的な3Dシミュレーションコードを用いることで、次のステップとして、自転を伴う大質量星の重力崩壊並びに回転するブラックホールの形成過程まで解き明かすことを目指している。
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Research Products
(48 results)