2017 Fiscal Year Annual Research Report
Precise measurement of muonium HFS for new physics search hunting
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17H01133
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
下村 浩一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (60242103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福山 武志 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (40167622)
野村 大輔 香川高等専門学校, 一般教育科(詫間キャンパス), その他 (40583555) [Withdrawn]
鳥養 映子 山梨大学, 大学院総合研究部, 名誉教授 (20188832)
三部 勉 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80536938)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミュオン / 超微細構造 / 超伝導電磁石 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はミュオニウム原子(正ミュオンと電子の束縛系)基底状態の超微細構造の精密分光を行うことである。J-PARC 物質・生命科学実験施設で取りだされる世界最高強度のミュオンビームを用いて10数年前に行われた先行研究を400倍上回る統計量を蓄積し、QEDの精密検証、ローレンツ対称性の破れの探索を行うとともにミュオンの質量と磁気モーメントをこれまでより一ケタ上回る精度で決定することを目指す。この目的達成のためには最終的には現在建設中のHラインと呼ばれる大強度軸収束ミュオンビームラインにおいて、超伝導電磁石を用いた1.7T磁場印加下での測定が必要となる。現在Hラインはまだ使用できないため、これまで、超伝導電磁石の精密磁場測定機器の開発、磁場一様性を確保するシミング技術の開発を進めた。また並行して高磁場実験用に開発してきた、ガスチャンバー、測定器を利用して既設のDラインにおいて極小磁場(~100nT)における超微細構造遷移の直接測定を行ってきた。これまでの同条件下での測定精度が300ppbであるが、これまでの4回のビーム実験において我々のグループは大型RFキャビティの製作、シリコンストライプ検出器の導入、時間微分データ解析法の開発等、様々な改良を加えることでこれまでの測定精度を超えるデータを取得することに成功し、現在詳細な解析が進行中である。今後はHラインにおける本実験の準備を進めるとともに狭小磁場における測定を継続してその精度を高めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度においては、Hラインにおける本測定の準備として精密磁場測定装置の開発およびその絶対値較正をおこなった。これまでのミュオニム超微細構造およびミュオンg-2測定における磁場測定はすべて陽子NMRが用いられてきた。現在我々のグループでも陽子NMR法を採用している、我々の方式はCW測定にデジタル処理を加え精度を高めるところに特徴がある。一方、他の実験(フェルミ国立研究所におけるg-2実験)グループではと協調してお互いの磁場測定装置のクロスキャリブレーションを実施している。フェルミ実験の場合は、我々の方式とは相補的なパルスNMR法を採用している。3月にアルゴンヌ国立研究所で行われた1.45T磁場下の測定ではブラインドアナリシスの後、双方の結果が10ppbの精度で一致し、両装置が正しく測定できることが示されている。 また、Dラインにおいては極小磁場(~100nT)における超微細構造遷移の直接測定を行ってきた。この際、従来のTM110モードキャビティ(直径80mm)からより大型のTM220モードキャビティ(直径160mm)に変更することで、Dラインからのミュオンビームをあますところなく利用することが可能となり、またSNも向上した測定を行うことが可能となった。この結果、初期には5000ppbであった、測定精度を約100ppbまで50倍の精度に高めることに成功した。これは極小磁場下における世界最高記録となる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降については、引き続き精密磁場測定装置の開発およびその絶対値較正を継続する。この際アルゴンヌ国立研究所およびJ-PARCにおいて当初の測定予定磁場1.7Tにおいて我々の測定装置とフェルミg-2実験用測定装置のクロスキャリブレーションを実施する。またすでに製作済の高磁場用RFキャビティについて、冷却水系統、温度モニター等の整備を行い、長期間の安定運転に備える。さらにHラインの建設にあたって実験エリアのユーティリティーの設置、ビーム中の陽電子を取り除くための静電セパレータの開発にも参加し、一刻も早い本実験のための準備をおこなう。一方Dラインにおける極小磁場下での超微細構造遷移の直接測定を継続し、とくに遷移周波数のクリプトンガス圧力依存性の系統的理解を深める。さらにデータ解析手法についても、時間微分データ解析、オールドミュオニウム法等、いくつかの手法があるが実データを利用してどのような方法が最適かの検証を行う。 また理論家と協力して本実験のセットアップを利用した新たな実験提案も検討する。
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