2019 Fiscal Year Annual Research Report
Valley-spintronics in atomic layer materials
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17H01138
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山本 倫久 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (00376493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樽茶 清悟 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, グループディレクター (40302799)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 原子層物質 / メゾスコピック系 / バレートロニクス / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
2層グラフェンをh-BN絶縁層を介してトップゲートとバックゲートで挟んだ二重ゲート構造を用いて、電荷中性点で現れる層間反強磁性状態における自発的なスピンバレーホール効果を検証した実験について、得られた実験結果の詳細な解析を行った。局在抵抗の増加に伴い、非局所抵抗が局所抵抗の3乗から1乗に比例する振る舞いに変化する様子を観測した。これは、バルクのスピンバレー流が試料中で一様に生じているというシナリオを支持するものであり、電流とスピンバレー流との間の変換効率が非常に高いことを示している。尚、この振る舞いは、電流-バレー流変換の効率が優れているとされるバレーホール効果でも観測されておらず、スピンバレーホール効果自体が効率的な非電荷流生成に適している可能性を示唆している。また、熱流などの非局所抵抗の他の要因についても検討し、スピンバレー流の寄与が支配的であることを確認した。 並行して、層間反強磁性状態にスピン流を注入し、同状態でスピンが散乱されずに流れる「スピン超流動」を検証する実験に取り組んだ。実験では、スピン流の伝導を検出する非局所成分が増大する様子が見られたが、電流拡散による寄与も大きく、完全に同定するまでには至っていない。更に、層間反強磁性状態を利用してスピン流とバレー流を相互変換するための試料の作製に取り組んだ。 TMDについては、MoSe2/WSe2ヘテロ構造における層間間接励起子のバレートロニクス技術の開発に向けて、引き続き積層構造の作製に取り組んだ。金薄膜を用いた劈開法で得られる薄膜が光学的に不活だったことから、ポリマーを用いた方法によって大面積の薄膜を得るべく技術開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TMDに関しては難航しているが、グラフェンのスピンバレートロニクス開発では、当初の想定より高効率の電流-スピンバレー流変換を実現するなど、順調に進んでいる。また、スピン流、バレー流の単なる制御ではなく、グラフェンの非局所伝導特性などから、層間反強磁性状態の物理そのものがより明らかになる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
TMDのスピンバレー流に関しては、引き続き積層構造試料の作製に取り組むが、難航する可能性がある。難航した場合、次年度が最終年度ということもあり、グラフェンのバレースピントロニクスの研究により集中したい。 グラフェンのバレースピントロニクスの研究では、スピン注入技術の確立と並行して、局所抵抗、非局所抵抗の非単調な温度依存性の起源の解明を第一優先として取り組む。ホールバーにおける局所抵抗測定は試料端の影響を受けやすいことから、試料内部(バルク)の伝導を明らかにすべく、コルビノ型の試料を作製して、その温度依存性を測定する。そのような測定により、層間反強磁性状態の相変化の様子などが捉えられる可能性がある。
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