2018 Fiscal Year Annual Research Report
Quantum phases and quantum excitations in spin systems
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17H01142
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 秀数 東京工業大学, 理学院, 教授 (80188325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 伸之 東京工業大学, 理学院, 助教 (80566737)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スピン系 / 量子相転移 / 量子相 / フラストレーション / 量子効果 / 磁気励起 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室で開拓した三角格子量子反強磁性体Ba2La2MTe2O12 (M=Co, Ni) の実験結果(磁化率,強磁場磁化過程,比熱,中性子回折)を詳細に解析し,論文にまとめ,出版した。 競合する最近接と次近接交換相互作用にランダムネスがあるスピン1/2の正方格子量子反強磁性体Sr2CuTe1-xWxO6を合成し,その低温磁性を磁化率と比熱及びNMRで詳細に調べた。最近接交換相互作用が支配的な母物質Sr2CuTeO6では,基底状態は秩序状態であるが,交換相互作用のランダムネスにより,基底状態がValence-bondグラス状態へと変化することを検証した。 2次元スピンダイマー系Ba2CuSi2O6Cl2の磁気励起の結果を詳しく解析をし,磁気励起に現れるバンドギャップの起源を明らかにした。また,バンドギャップ内にトポロジカルに保護された端状態という新規な量子状態が存在することを突き止めた。この成果は2020年度に論文として発表し,プレスリリースを行った。 基底状態が厳密にスピン液体状態になることが理論的に示されている蜂の巣格子Kitaev模型のモデル物質α-RuCl3の熱ホール効果の実験を京都大学のグループと共同で行い,Kitaev模型に特徴的な熱ホール係数の半整数量子化現象を初めて観測した。結果を詳しく解析し,論文にまとめ,プレスリリースを行った。反響は大きく,論文の被引用数の伸びは著しい。また,国内外の研究者から試料提供の申し入れがあった。更に,α-RuCl3の磁場中における低エネルギー励起をESRで詳しく調べ,磁場中相転移に伴う励起モードのソフトかと局在Majorana励起と考えられる低エネルギー励起を観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物質合成と単結晶育成が順調に進み,これを用いた物性測定で新奇な現象がいくつか見出された。(1) 三角格子量子反強磁性体Ba2La2MTe2O12における量子揺らぎに起因する磁化曲線のプラトーの発見は,観測例の少ない巨視的量子効果である。(2) 正方格子ランダムJ1-J2反強磁性体におけるValence-bondグラス状態の発見は,新しい基底状態の存在を明らかにしたものである。また,近年,基底状態がスピン液体であることを示唆する実験結果が幾つも報告されているが,その原因が交換相互作用のランダムネスであるとの理論的な指摘がある。本研究はこれを実験的に検証したものである。(3) 2次元スピンダイマー系Ba2CuSi2O6Cl2におけるトポロジカルに保護された端状態の発見は,予期せぬ発見で,スピン系の励起状態におけるトポロジカル状態の最初の観測例である。(4) Kitaev模型のモデル物質α-RuCl3における熱ホール係数の半整数量子化現象はMajorana励起に特徴的な現象で世界中の注目を集めている成果である。また,ESRによる局在Majorana励起に対応する磁気励起の観測もKitaev模型を拡張したKitaev-Heisenberg模型の理解に貢献することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにスピン1/2の三角格子量子反強磁性体Ba3CoSb2O9の磁気励起を中性子散乱で詳細に調べ,分数スピン励起が起源と考えられる高エネルギーまで続く強い連続励起を含む特異な磁気励起スペクトルを観測した。今後は実験対象をフラストレーションが更に顕著なスピン1/2の籠目格子量子反強磁性体Cs2Cu3SnF12とRb2Cu3SnF12に広げ,中性子散乱実験とその解析によって,磁気励起に現れる量子多体効果を解明する。また,高エネルギーまで続く強い連続励起を含む特異な磁気励起スペクトルがフラストレーションの強い量子反強磁性体に特徴的であることを示すには,エネルギースケールの異なる物質の研究が必要であるので,引き続き物質開拓を精力的に進める。 これまでKitaev模型のモデル物質α-RuCl3における中性子散乱による磁気励起の研究は,主に高エネルギー領域と高温領域が中心であった。α-RuCl3は世界的に注目を集めている磁性体であるが,その相互作用パラメーターの詳細はまだ分かっていない。相互作用パラメーターの決定には,低エネルギーのスピン波励起の分散関係を知る必要がある。我々は,α-RuCl3の純良単結晶を用いて,低エネルギー励起を広い逆格子空間で詳細に調べ,スピン波励起の分散関係を求め,その解析からα-RuCl3における相互作用パラメーターの決定を行う。 Kitaev模型に等方的なHeisenberg項が加わったKitaev-Heisenberg模型の場合には,三角格子系などのフラストレート系でZ2 vortex結晶と呼ばれる不整合スピン構造が現れることが理論的に予言されている。これは新しい起源の不整合スピン構造であるので,その実験的発見は重要な意味を持つ。そこで,Ru3+を磁性イオンとする磁性体を開拓し,Z2 vortex結晶の発見を目指す。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Unusual thermal Hall effect in a Kitaev spin liquid candidate α-RuCl32018
Author(s)
Y. Kasahara, K. Sugii, T. Ohnishi, M. Shimozawa, M. Yamashita, N. Kurita, H. Tanaka, J. Nasu, Y. Motome, T. Shibauchi, and Y. Matsuda
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Journal Title
Phys. Rev. Lett.
Volume: 120
Pages: 217205 (1-6)
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Majorana quantization and half-integer thermal quantum Hall effect in a Kitaev spin liquid2018
Author(s)
Y. Kasahara, T. Ohnishi, Y. Mizukami, O. Tanaka, Sixiao Ma, K. Sugii, N. Kurita, H. Tanaka, J. Nasu, Y. Motome, T. Shibauchi and Y. Matsuda
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Journal Title
Nature
Volume: 559
Pages: 227-231
DOI
Peer Reviewed
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