2017 Fiscal Year Annual Research Report
Materials development toward novel multiferroic properties and functionalities
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17H01143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 剛 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (80323525)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マルチフェロイクス / 電気磁気効果 / フェロイックドメイン / 液晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は本計画の開始年度にあたり,論文発表に至るまでの成果としては,多くはなかったが,「コニカルらせんマルチフェロイクスにおける新規複合ドメイン制御」および「液晶に着目した新規な室温電気磁気効果物質の開発」の二つのテーマに関して、論文公表に至る成果を挙げた。前者の研究に関しては,オリビン型マンガン酸化物Mn2GeO4を対象として,コニカルらせん磁気構造を示すマルチフェロイクスにおける強誘電および強磁性ドメインの特異な結合現象の観測,さらには現象論的な議論によるそのメカニズムの解明を図った。後者の研究に関しては,強誘電液晶の電気磁気効果材料としての可能性を探った。液晶材料のいくつかは強誘電性を示し,それらは電場による分子配向、さらには偏光特性の制御が可能であり、ディスプレイなどに使われていることはよく知られている。これに対し,本研究ではそれを構成する分子の反磁性に着目し,その分子配向および強誘電性の磁場制御を試みた。強誘電液晶を構成する分子は反磁性を示すが,反磁性異方性を有するため磁場の印加によって分子軸の方向を制御することが可能である。これらのことを利用して強誘電液晶に対する磁場の印加により分子軸の配向を変化させることに付随して強誘電分極の方向を制御するといった磁場誘起の強誘電性制御が可能となる。本研究計画の推進により実際に,2種類の分子で構成される強誘電液晶材料において室温以上の温度で磁場印加による強誘電分極の変化といった電気磁気効果の観測に成功した。また,研究代表者を組織委員長としたAPCTP Workshop on Multiferroicsを11月に東大柏キャンパスにて開催した。マルチフェロイクス研究分野を牽引する研究者が欧米アジアから参加し,同研究分野の国内外の動向調査を行う絶好の機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度はじめに,本研究計画申請書の記載時には予期していなかった本研究代表者の異動があった。このため平成29年度は、旧所属から新所属への実験設備の移設など研究環境を整備するところから開始した。また,新たな研究室の立ち上げ期となり研究室のメンバーも減少するといったことがあり,これらの要因により申請書記載時の元々の計画よりも若干の研究の遅れが生じていた。しかしながら,この1年間の活動により旧所属先からの装置移設などが完了し,本研究計画を遂行するのに支障のないレベルまで新しい所属機関における研究環境の整備が進んだ。研究計画に記載した個々の研究内容を可能とする物質開拓・合成,測定系の整備など着実に進み,平成30年度以降は、学会発表・論文発表などの形で順次,得られた成果の公表に努めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究実施により,本研究計画のうち,「特異な結晶構造ユニットが誘起する渦状スピン配列に起因する電気磁気結合の開拓」および「コニカルらせんマルチフェロイクスにおける新規複合ドメイン制御の実現」などのテーマを推進するうえで、成果発表には至らないまでも,物質開発・合成の面でいくつかの進展が得られており,重要な実験結果が蓄積されつつある。平成30年度はこれらのテーマに関して,これまでに合成を行ってきた試料を用いて様々な測定(基礎電気磁気特性、構造物性、光学特性、中性子線散乱、共鳴X線散乱測定など)へと展開し,とくにマルチフェロイック物質における特異な複合フェロイックドメイン観測・制御の実現を図っていく。また,「液晶に着目した新規な室温電気磁気効果物質の開発」のテーマに関しては、これまであまり注目されることのなかった液晶材料の物性に対する強磁場の効果の詳細をさらに調べていく予定である。
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Research Products
(23 results)