2019 Fiscal Year Annual Research Report
Materials development toward novel multiferroic properties and functionalities
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17H01143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 剛 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (80323525)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マルチフェロイクス / 電気磁気効果 / フェロイックドメイン / 磁気四極子 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は,「室温電気磁気効果を示す六方晶フェライトにおけるマルチフェロイックドメイン結合の機構解明」および「正四角台塔構造ユニットを持つ磁気多極子系反強磁性体における磁場誘起相の電気磁気結合の検証」の二つのテーマに関して、論文公表に至る成果を挙げた。前者の研究に関しては,横滑りらせん磁気構造に起因する室温電気磁気効果を示すZ型六方晶フェライトSr3Co2Fe24O41を対象とした。SPring-8 BL17SUにおいて,円偏光X線共鳴回折測定を行い,同物質における共存する強磁性および強誘電性を担う二種類の秩序変数が形成するドメイン構造をそれぞれ可視化し,外場応答の検証によって結合性を明らかにした。さらに得られたドメイン観察の結果とランダウ理論に基づいた対称性の考察と組み合わせ,結合性の有無から電気磁気応答の起源を解明した。後者の研究では,正四角台塔構造と呼ばれるアシンメトリックな結晶構造を内包し,強的な磁気四極子秩序を示す磁性体Pb(TiO)Cu4(PO4)4を対象として,結晶主軸方向に18テスラまでの磁場を印加したときに現れる磁場誘起相における電気磁気応答を磁場中電気分極測定を行うことにより調べ,同相における電気磁気結合の起源に関して検討を行った。これらの研究成果を含めた本基盤研究による成果を,研究代表者による国際会議での招待講演(9件), 国内研究会での依頼講演(1件)に加え,研究協力者などにより複数の国内外の学会・研究会などで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載した成果以外の研究に関して,令和元年度にはとくに,電気磁気光学効果の測定を可能とする測定系の構築,また,磁気多極子を秩序変数とする秩序状態のドメイン構造および制御の可視化を可能とする測定系の構築を進めた。同測定系を用いることにより磁気四極子・磁気トロイダル秩序に起因する方向二色性の測定やそれを利用したドメイン構造・制御の詳細な検証が可能となる。すでに予備的な実験ではいくつかのマルチフェロイック物質を対象とした観測に成功しており,今年度はこれらの測定系を用いたフェロイック物質における多様なドメイン観測に基づく同物質系の理解を進める。さらに,新たなフェロイック状態として最近議論が活発化している「フェロアキシャル秩序」に対象を広げるべく,同秩序の観測を可能とする測定手法の検討,測定系の構築などの準備を進めた。フェロアキシャル秩序とは構造ユニット中の左右回転に特徴づけられる原子変位を秩序変するとする秩序状態であり,その観測手法はほとんど確立されていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで実施してきた下記の研究項目を引き続き継続するとともに論文発表としての成果発表に注力する予定である。(1)非対称構造といった特異な結晶構造ユニットが誘起する電気磁気活性なスピン秩序に起因する新規電気磁気効果物質の開拓。(2) 電気磁気活性な磁気多極子秩序に起因する電気磁気光学効果を利用した光制御。(3)複数の秩序変数を有するマルチフェロイクスにおける新規複合ドメイン制御およびその理解。 項目(1)ではさらなる物質開拓を進め,項目(2)では電気磁気活性な磁気四極子や磁気トロイダル秩序を有する複数の磁性体における方向二色性などの電気磁気光学応答の評価を行い,それらを実現させる。項目(3)では,(2)の効果を用いた電気磁気活性な磁気多極子に起因するドメイン構造の可視化,コニカルらせん磁性体における複数の秩序変数に起因する多様なドメインのユニークな制御の実現を図る。今年度は,さらに令和元年度から着手してきたフェロアキシャルと呼ばれる構造ユニットの回転に特徴付けられる秩序変数に起因するドメイン観測・制御にも注力する。成果発表については,新型コロナウイルス感染の拡大により,今年度前期に予定されていた国際会議の多くは中止や年度内または年度を越えた延期が決定している。そのため,成果発表の方法として論文発表を中心とした公表をより積極的に進めていく。
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Research Products
(29 results)