2017 Fiscal Year Annual Research Report
Single electron manipulation on liquid He surface and its application for quantum information processing
Project/Area Number |
17H01145
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
河野 公俊 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (30153480)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ヘリウム液面電子 / ヘリウムマイクロチャネル / 少数電子 / ウィグナー結晶 / スリップ伝導 / ホットエレクトロン効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の研究では、毛細管凝縮現象を利用して、超流動ヘリウムのマイクロチャネルを形成し、その表面に電子を捕獲する技術を開発して、ポイントコンタクトの帯電効果、2次元ウィグナー結晶の境界整合性に依存した伝導現象、擬1次元電子系の固化、整数電子列の逐次形成、ウィグナー結晶のスティック・スリップ伝導現象など、新奇な現象を発見し、その発現機構を解明してきた。本研究計画では、この過程において培った、ヘリウム表面上で少数個の電子を操る技術を、即ち1列に整列した電子列を作成する技術を活かして、究極の電子操作である、単一電子の捕獲と移送を自由に行う技術を実現し、量子ビットの構成に挑戦することを目的とする。 今年度は、マイクロチャネル素子のヘリウムチャネル内に、収束イオンビームを用いて3次元的な構造を作りこむ技術の開発を行った。多層金属電極構造を作成したうえで、そのチャネル部分に3次元的な突起を作成する。その過程で、下層電極の接地を十分にとることが必要である。そのためのいくつかの方法を試した。特に、伝導性ペーストを塗布する方法を重点的に試し、十分な歩留まりが得られることを明らかにした。 また、これまでに得られたヘリウムマイクロチャネル上のウィグナー結晶の特異な非線形伝導現象のメカニズムについてその機構を解明すべく、解析と考察を重ねた。ウィグナー結晶は、平衡状態ではヘリウム液面の凹みを各電子の下に伴っており、その運動はヘリウム液面の凹みを伴う。そのため、ヘリウム表面波の位相速度に近づくと大きな抵抗を受けるが、さらに強い電場を加えることで、液面の凹みを後に残して、ウィグナー結晶のみ加速されるスリップ現象が観測された。この過程で、特異な伝導特性が示されるが、この領域では、電子系に非常に強い電場が働いている。従って、強いホットエレクトロン状態になっていることが結論される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画を遂行していた研究員が転出し、次の研究員採用に手間取ってしまった。優れた候補者を探すことは困難な作業であり、現在、候補者(外国人)と交渉を行っている。このため、マイクロチャネル素子の作成が、上記に記載した試行段階で止まっており、初年度に予定していたマイクロチャネル素子の特性を調べるまでに至らなかった。 また、研究活動の拠点を現在の所属機関から、研究分担者者のいる沖縄科学技術大学院大学に移することを進めている。そのために、マイクロチャネル素子作成に利用するナノ加工施設も変更となることから、条件だしなどを再度行う必要がる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在交渉中の候補者と早期に採用のための条件を詰めて、研究員として採用できるように努力する。それにより、新しい所属機関で研究活動をできるだけ早期に再開し、予定していた研究計画を実行に移す。また、研究分担者の持つ優れた高周波実験技術を取り入れることによって、当初予想していなかった展開が得られるように、研究計画を再度練り直し増強する。
|
Research Products
(24 results)