2017 Fiscal Year Annual Research Report
フッ化型同位体分子計測による後期太古代の生物地球化学
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17H01165
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
上野 雄一郎 東京工業大学, 理学院, 教授 (90422542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ジルベルト アレキシー 東京工業大学, 理学院, 特任助教 (20726955)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 同位体分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
フッ化法による新たな同位体分子計測を実現するため、フッ化法の開発を行った。平成29年度は、最も単純なC2化合物であるエタン(C2H6)をターゲットとして、13C13C二重置換同位体分子計測法を開発した。まず、標準エタン試料のフッ化反応装置を構築し、これにガスクロマトグラフを導入することで、フッ化により生成したC2F6分子の精製法を最適化することを試みた。試行錯誤の結果、フッ化の効率と生成物の純度はF2ガスを用いたときに最も良く、最大収率80%でC2H6をC2F6に変換することに成功した。次に、質量分析計コレクターシステムを改良し、C2F5+イオンの同位体分子119(12C12C), 120(12C13C)および121(13C13C)の三種を同時に計測することで、炭素同位体比および二重置換度の計測を可能にした。フッ化および精製法をこの同位体計測に最適化したところ、13C13C二重置換度を0.3‰以内の精度で計測可能であることが示された。一方、後期太古代堆積岩に見られる異常に13Cに枯渇した有機物がどの岩相に存在し、炭酸塩炭素同位体比といかなる相関を持つのかを調べた。その結果、約27億年前のFortescue層群の炭酸塩岩に存在している-40‰以下の軽い有機炭素は、同位体的に重い成分と軽い成分の混合したものであり、異常に13Cに枯渇した有機炭素成分は泥質部により濃集していることが分かった。今後、これらの試料を用いて、フッ化による同位体分子計測を適用していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り開発が順調に進み、炭素二重置換同位体計測システムが構築されたことは画期的である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに構築したシステムをエタン以外の有機化合物について順次適用するため、さらなるシステムの改良をおこなう。エタンについて天然試料の計測を進めるとともに、最終目標である堆積有機物についても順次適用する。また、13C13C二重置換度の計測はいまだに報告例がない未開拓分野であるため、計測法の標準化も合わせて行う。これについては分担者のGilbertが主導的に研究を推進する。一方、硫酸のSO二重置換度の新規計測については採択額の減額により、コレクターシステムの改良を断念したが、フッ化法の開発自体は進められるため、前年度までに構築したフッ化システムを転用して、硫酸塩試料のフッ化・精製法の確立を行う。これによりえられるSO2F2ガスの同位体計測は国内外の共同研究として進める。
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