2019 Fiscal Year Annual Research Report
マントル鉱物におけるOH欠陥:先端NMR分光法と第一原理計算による徹底解明
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17H01174
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
薛 献宇 岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (70362986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 正美 岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (90234153)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鉱物構造 / 分光法 / 水 / 高圧 / 欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
引き続き、前年度より継続してきた主要なマントル鉱物である各種マグネシウムケイ酸塩高圧相における水の溶解機構について、高温高圧で合成した試料において、1H MAS,29Si MAS, 1H-29Si CPMASをはじめとする多様なNMR測定の他、観測されたNMRスペクトルの確かな解釈を得るため、第一原理計算も実施した。Mg2SiO4 ringwooditeについては、1H NMR からは、OHはMgおよびSi欠陥の両方に存在すると考えられる特徴が見られ、第一原理計算からは、それぞれの欠陥様式について、OHの配置の異なる多様な欠陥構造モデルが得られた。 また、水の振る舞いのカチオン依存性を解明するために、マグネシウムケイ酸塩系鉱物のほか、カチオンの異なる亜鉛ケイ酸塩系高圧鉱物に関する比較的研究も行った。Zn2SiO4系については、我々のグループで以前高分解能NMRとX線回折法を組み合わせることにより、長年構造が不明だった二つのZn2SiO4高圧相III, IVの構造を解明し、Mg2SiO4系の高圧相との異なる振る舞いを明らかにした。今回は、hemimorphite (Zn4Si2O7(OH)2・H2O)及びそれを550Cで加熱脱水させたZn4Si2O7(OH)2を出発物質として、高温高圧下で合成実験を行い、得られた試料はNMR、Ramanなどの分光法測定及び粉末X線回折測定で調べた。その結果、複数の新規の含水高圧相と思われる相を得ている。そのうちの一つは、地球深部沈み込み帯に存在すると思われるphase A相 (Mg7Si2O8(OH)6)と同じ構造を持つZn-phase A相 (Zn7Si2O8(OH)6)であることがわかった。Zn-phase A相の放射光粉末X線回折測定に基づく結晶構造精密化も行った。 現在は、これらの研究成果を国際誌で報告するため、複数の論文を準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高分解能NMR測定、第一原理計算、粉末X線回折法、ラマン分光法測定及び高圧合成実験を組み合わせた手法によるマントル主要鉱物における水の溶解機構に関する洞察、さらに、水を含む高圧珪酸塩鉱物のカチオンの依存性を理解する上で興味深いZn-phase Aの発見とその精密構造解析の実施など、重要な成果を挙げた。特に、Zn-phase Aの発見は予想外だった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、最終年度であるため、本研究プロジェクトの総括に取り掛かる。これまで得た研究成果をさらに解析し、またまだ検証が必要な部分を迅速に実施し、高分解能NMR測定、第一原理計算、粉末X線回折法、ラマン分光法測定及び高圧合成実験を組み合わせたアプローチの有用性、並びにそれらにより得られたマントル鉱物並びにカチオンの異なる高圧珪酸塩鉱物における水の振る舞いの系統性に関する洞察を発信する。これらの成果を早期に国際誌に公表するため、着実に論文を準備する。
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Research Products
(7 results)