2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H01175
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉田 精司 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80313203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 弥生 東京大学, 地震研究所, 助教 (90282730)
笠原 慧 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00550500)
吉岡 和夫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (70637131)
黒澤 耕介 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 研究員 (80616433)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 惑星探査 / 惑星期限・進化 / 惑星大気 / 同位体 / 希ガス / 質量分析装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
火星大気に含まれるNe同位体比測定では、同じ質量電価比をもつ“Ar二価イオン”が妨害成分となり、測定精度が出ない。本研究では、分子種により透過特性の異なる分離膜を用いて、質量分析部に導入する前にNeとArを分離し、上記の問題を解決することを目指している。膜材候補として、バイトンとポリイミドを選択し透過特性を評価した。その結果、0.125mm厚のポリイミド膜を用いた分離膜に地球大気(~10^5Pa)を透過させると、20Ne/40Ar比を10^-3(地球大気の値)から10^2まで向上できることが判明した。1mm厚のバイトン膜では20Ne/40Ar比が3桁向上した。これらの結果が、膜内の分子拡散理論で説明できることも確認した。火星大気組成を仮定した透過の理論計算と質量分析計内で作られるAr++/Ar+比(約0.1)とから、0.1mm厚のポリイミド膜でNe測定が可能なことがわかった。これにより、火星大気進化を知る上で重要な20Ne/22Ne比を精度5~10%で測定できる見通しが立った。 また、火星探査に必要な宇宙空間航行期間を想定して、放射線によるポリイミド膜の透過特性劣化度を調べた。50 kradのガンマ線を照射する前後でポリイミド膜に対するNe、Arの透過量に劣化は見られず、十分な放射線耐性を有していることが確認できた。 さらに、NASAの火星探査機搭載装置での使用実績もあるSAES社製のST175を準備して、材質からの脱ガス、標準大気を用いてのガス精製効率(精製時間や精製結果が必要充分であるか等)、固定方法や耐久性、などについて試験や評価を進めた。ゲッター材に7Aで数10分以上電流を流して脱ガスを行うと要求ブランクに近くなること、0.3 Pa程度の地球大気を精製するにはゲッター材に電流を流す必要なないことなどがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の肝である分子種による透過分離膜の開発が順調に進展したことが、最も大きな成果である。当初の予想よりバイトンとポリイミドの透過特性に大きな違いがあったことと、放射線耐性の良さから選んだ膜剤候補であるポリイミドの方がむしろ我々の目的に合致した透過特性を持っていたことなどは驚きであったが、我々の目的達成には非常に好都合な驚きであり、繰越申請を行う原因となった。さらに、実験で得られる透過ガス量の曲線はいつも複雑な形を持つため、予測が難しく、実験計画立案を困難にしていた。しかし、本年度の研究の中で、非常に少数のパラメーターのみで精度良く透過ガス量の理論予測ができることが分かった。これは、我々が初めて見つけたわけではないので学問的な価値は大きくはないが、研究計画の迅速な遂行という観点では大変に大きな朗報であった。
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Strategy for Future Research Activity |
最も不確実性が高い基盤的な実験と理論モデルの整備が順調に実施できたので、今後は実際の装置開発に向けてより現実的な設計パラメターの選定に向けて開発を進める方針である。その際、最終的には小型実験ロケットなどに搭載する目処をつけることが重要である。そのため、ロケット開発を行っている分担者との搭載条件の摺り合わせを加速していく。 加えて、本科研費と並行して進めている「はやぶさ2」探査では、小惑星の近傍および表面での特殊運用に参画する中で、惑星着陸オペレーションのデリケートさを実感する毎日である。このような運用の機会にその一部だけでも知り得た宇宙機運用の不確定性さは、衛星搭載機器がシンプルな機構と設計でなければならないことを改めて実感させてくれた。今後の計画では、性能向上を図る際にシンプルさの追求により一層の重みを置いた開発方針とする。
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Research Products
(20 results)
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[Presentation] Pre-Arrival Scientific Calibration of the Hayabusa2 Multi-Band Visible Camera2018
Author(s)
?サソSugita, S., E. Tatsumi, T. Kouyama, S. Kameda, Y. Yokota, S. Sakatani, H. Suzuki, M. Yamada, H. Sawada, R. Honda, C. Honda, T. Morota, K. Ogawa, M. Hayakawa, K. Yoshioka, N. Ogawa, N., Tanabe, H. Kamiyoshihara, Y. Iijima, ONCツ?Team
Organizer
Lunar and Planetary Science Conference XXXXIX
Int'l Joint Research
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[Presentation] Hayabusa2 Landing Site Selection (LSS) Training: Summary Report of Scientific Evaluation2018
Author(s)
Yabuta, H. ,N. Hirata, R. Honda, Y. Ishihara, K. Kitazato, M. Komatsu, A. Miura, K. Matsumoto, T. Morota, T. Nakamura, A. Nakato, T. Noguchi, T. Okada, N. Sakatani, S. Sugita, S. Tachibana, S. Tanaka, E. Tatsumi, S. Watanabe, T. Yamaguchi, Y. Yamamoto, Hayabusa2ツ?Lssaaツ?Team
Organizer
Lunar and Planetary Science Conference XXXXIX
Int'l Joint Research
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[Presentation] Mars Nano Orbiter: A Cubesat for Mars System Science2018
Author(s)
Ehlmann, B. L., A. Klesh, T. Alsedairy, R. Dekany, J. Dickson, C. Edwards, F. Forget, A. Fraeman, D. McCleese, S. Murchie, T. Usui, S. Sugita, K. Yoshioka, J. Baker
Organizer
Lunar and Planetary Science Conference XXXXIX
Int'l Joint Research
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[Presentation] The Camera of the MASCOT Asteroid Lander on Board Hayabusa 2 - Science Objectives, Imaging Sequences, and Instrument Design2018
Author(s)
Schmitz, N., Jaumann, R., Koncz, A., Schroeder, S., Trauthan, F., Mottola, S. Hoffmann, H. Michaelis, H.; Otto, K., Sugita, S. and Perez-Prieto
Organizer
Lunar and Planetary Science Conference XXXXIX
Int'l Joint Research
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