2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H01182
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佃 達哉 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90262104)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 金超原子 / 超原子分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、特異な機能を積極的に付与するという視点から、新奇の超原子および超原子でできた擬似的な分子(超原子分子)の物質科学を切り拓くことを目的としている。本年度は下記の成果を得た。 【テーマ1】機能性超原子の標的合成と評価 (1)高分子保護金超原子Au34に対してPdやRhを1原子だけドープすることに成功し、ドーピングによってC=C結合の水素化反応に対する触媒能が出現することを見出した。X線吸収分光の結果から、ドーパント原子は金超原子の表面に露出し、反応サイトを提供することが示唆された。(2)扁平構造の(Au9)3+に対してヒドリドをドープすることで得られた(HAu9)2+が、閉殻電子構造を持つことを、理論計算及び1H-NMRによって見出した。さらにAuClユニットを逐次的に導入することで、球状金超原子(Au11)3+への選択的変換を実現した。(3)金超原子(Au8)2+及び(Au11)3+をキラルな配位子で修飾することで、キラリティーの制御を可能にした。(4)チオラート(RS)保護金超原子Au18(SR)14のワンポット合成法を開発し、その特異的な光学特性を明らかにした。(5)アルミニウム超原子と有機分子の気相反応によってAlnC2-が選択的に得られることを見出した。光電子分光法と理論計算によって、アルミニウム原子数の増加とともに、C2内包型、解離C原子内包型、C2外接型と多様な構造を取ることが明らかになった。 【テーマ2】超原子分子の標的合成と評価 アスペクト比及び表面修飾が制御された極細金ナノロッド(直径1.7-2.0 nm)の合成法を確立し、その光学特性と構造因子の相関を明らかにした。X線吸収分光及び紫外可視分光法によって、球状超原子がミセル中で連結して生成することが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
金超原子にドープされたヒドリドが、あたかも金原子として振舞うことを見出した。さらに、金原子やその他の金属と置換することが可能であることから、ヒドリドを介在させることでボトムアップ的な手法による新しい精密合成の可能性が広がった。また、極細金ナノロッドについては、チオラートでの修飾が可能になり、安定性が格段に向上した。その結果、生成後のサイズ分離が可能になるため、原子精度での構造評価の端緒が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)金超原子への水素ドープによって生成した準安定状態を経由した、新規超原子の精密ボトムアップ合成法を開発する。 (2)配位子による修飾を利用して、キラリティーの起源の解明及び制御を目指す。 (3)チオラート保護金クラスターの部分融合を目指して、大気圧プラズマの照射による変換過程を追跡する。 (4)チオラート保護極細金ナノロッドのサイズ選別と質量分析を行い、構造知見を収集するとともに、局在表面プラズモンの出現の閾サイズを突き止める。
|