2017 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ原子置換ポルフィリンの合成と励起状態制御による機能創出
Project/Area Number |
17H01190
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
忍久保 洋 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50281100)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポルフィリン / 励起状態 / ヘテロ原子 / 光線力学療法 / 非線形光学応答 / 金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規ヘテロ原子置換ポルフィリンを合成するため、ポルフィリンの4つのメゾ位の炭素のうち2つを窒素に変換したジアザポルフィリンの変換反応を試みた。その結果、ジアザポルフィリンをヒドラジンと塩基により還元することによりジアザクロリンおよびジアザバクテリオクロリンを合成することに成功した。この際、用いるヒドラジンの当量と塩基の種類を使い分けることにより、ジアザクロリンおよびジアザバクテリオクロリンを選択的に得ることにも成功した。ジアザクロリンおよびジアザバクテリオクロリンはもともとのジアザポルフィリンに比べて、大きく長波長シフトした吸収および発光特性をもつことを明らかにした。特にジアザバクテリオクロリン は800 nm付近の近赤外領域に強い吸収と発光を示すことが分かった。この領域の光は生体透過性が高いため、光線力学療法剤として優れている可能性がある。 一方、メゾ位にケイ素をもつポルフィリン類縁体であるシラコロールについても、ジピリン前駆体のパラジウム触媒によるヒドロシリル化を用いることによりその合成を達成した。これは、メゾ位にケイ素をもつポルフィリン類縁体の初めての合成例である。また、得られたシラコロールは近赤外領域に吸収および発光示した。電気化学測定および分子軌道計算の結果、シラコロールのLUMOがその炭素類縁体に比べてLUMOが大きく低下していることが分かった。シラコロールのLUMOを詳しく分析したところ、炭素ーケイ素結合のσ*軌道がπ電子系のπ*軌道と共役することにより、そのエネルギーが著しく低下していることを明らかにした。 さらに、ジピリン前駆体を用いることにより、メゾ位にリンやホウ素をもつ斬新なポルフィリン類縁体の合成も達成することができた。今後は、これらの物性や機能を明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ポルフィリンの4つのメゾ位の炭素のうち2つを窒素に変換したジアザポルフィリンを還元すること により、ジアザクロリンおよびジアザバクテリオクロリンを効率的に合成することに成功した。特にジアザバクテリオクロリン は800 nm付近の近赤外領域に強い吸収と発光を示すことが分かった。この領域の光は生体透過性が高く光線力学療法への応用が期待され、実際にフランスの研究者との国際共同研究に発展した。
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Strategy for Future Research Activity |
ジアザポルフィリン、ジアザクロリン、ジアザバクテリオクロリンによる 乳がんの細胞を用いた光線力学療法(PDT)の研究を進める。細胞での実験により高いPDT活性を示す分子を同定することを目的に 実験を行う。また、これらの分子の励起状態の特性を評価するため、励起寿命や過渡吸収スペクトルの測定を行う。なお、励起 状態における分光測定はDongho Kim教授(Yonsei大学、韓国)との国際共同研究により実施する。 また、メゾ位にリンやホウ素をもつ斬新なポルフィリン類縁体の合成に成功した。これらの励起状態の特性を分光測定や分子軌道計算により明らかにしていく。
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