2017 Fiscal Year Annual Research Report
空軌道の徹底活用を通した高反応性ホウ素化合物の創製
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17H01191
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山下 誠 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10376486)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ホウ素 / 合成化学 / 空軌道 / ボリルアニオン / ジボラン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究項目(1)(a)では目的のボリルアニオン前駆体として使用するハロボランの合成を検討していたところ、ホウ素の代わりにアルミニウム原子を導入可能なことを見いだし、生成したハロアルマンの還元により炭素置換アルマニルアニオンが合成できることを発見した(類似の窒素置換アルマニルアニオンの合成論文が2018.4.16付でNature誌に発表された)。この化合物はベンゼンと室温2時間以内に反応してヒドロフェニルアルミナートになり、その高い塩基性が示された。また、MeOTfやn-hexClと反応して求核置換生成物を与えることや、C6F6と反応して芳香族求核置換反応が進行することも明らかとした。また、並行して炭素および窒素置換ボリルアニオンの合成も検討しているところである。研究項目(2)(a)では高ルイス酸性ジボラン(4)のライブラリ構築の一部として、4つのo-tol基が置換したジボラン(4)を合成、これが水素分子と直接反応することを見いだした。研究項目(2)(c)ではアルカリ土類金属のうち、MgおよびCaを用いる検討を行ったところ、ジボラン(4)ジアニオンが生成することが判明した。別途ジボラン(4)とLiとの反応にて同様のジボラン(4)ジアニオンが発生すること、これがCH2Cl2との反応により2当量の炭素置換ボリルアニオンとして作用することを見いだしている。研究項目(2)(d)ではアゾベンゼンおよびピリダジンのN=N二重結合へのジボラン(4)の単純付加に加えて、フタラジンのN=N二重結合との反応ではN=N二重結合が切断されることを見いだした。また、ピリジンとイソシアニド共存下ではジボランがピリジン2位のC-H結合を選択的に官能基化することも見いだしている。一部の研究については既に論文発表を行ったが、残りの研究については30年度中に論文発表を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度当初に設定した研究期間全体での目標のうちいくつかを達成することができた上に、求核性のアルミニウムアニオンを新しく発見することができた。得られた成果のうち複数については既に論文発表を行っており、他の成果については論文投稿準備中であるため、概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
全体計画のうち研究項目(1)については未着手の課題の検討を行うと共に、(1)(a)から派生した求核性アルミニウムアニオンの化学を発展させるために種々の検討を行う。具体的には論文投稿、他の求電子剤として典型元素ハロゲン化物や遷移金属ハロゲン化物を用いた求核的アルミニウム化、得られるアルミニウム化典型元素化合物やアルミニル金属錯体の素反応解明、特に小分子との反応性の解明、へとつなげる。研究項目(1)(b)(c)(d)についても着手し、2年目のここで大きな発展を目指す。研究項目(2)については引き続きライブラリ構築を続けると共に、小分子との反応性解明、炭素置換ボリルアニオン源としての応用、不活性な窒素分子の結合切断への検討を進めることとしている。
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