2017 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of unusual valence compounds and the exploration of novel functions - making use of extreme conditions
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17H01195
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石渡 晋太郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00525355)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高圧合成 / 異常高原子価遷移金属酸化物 / らせん磁性 / 巨大交差相関応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
立方晶ペロブスカイトSrCoO3は室温強磁性を示す珍しい酸化物である。我々はこれまでに、Srの一部をよりイオン半径の大きいBaで置換した(Sr,Ba)CoO3の単結晶の高圧合成に成功し、Ba置換量増大に伴う格子定数の増大によって、基底状態が強磁性かららせん磁性へと変化することを見いだした。本年度は、AサイトのSrをイオン半径の小さなCaで置換したCaCoO3の高圧合成に初めて成功し、これが直方晶に歪んだGdFeO3型構造を有すること、またらせん磁性を示す可能性があることを見いだした。さらに固溶体Sr1-xCaxCoO3の高圧合成を行い、Co-O格子の構造変化と磁気基底状態の関係を調べた。その結果、Ca置換量xが0.6を超えたところで立方晶から直方晶への構造変化が生じ、そこで基底状態が強磁性から弱強磁性へと変化することが示唆された。さらにxが増大して0.8を超えたところでらせん磁性と思われる相へと転移することも確認された。これはGdFeO3型歪みの増大に伴うバンド幅減少に関連付けることができる。これにより、Co4+系ペロブスカイトの磁気基底状態は、Aサイトイオンの制御を通じた(コバルトd軌道と酸素p軌道からなる)バンド幅制御により、強磁性かららせん磁性まで変化することが明らかとなった。立方晶ペロブスカイトにおけるらせん磁性の発見は、Fe4+系ペロブスカイトに次ぐ2例目であり、ペロブスカイト型コバルト酸化物としては初めての例である。また、4つの国際会議で、巨大磁気体積効果を示す(Sr,Ba)CoO3や新奇ペロブスカイト型銅酸化物PrCuO3に関する招待講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新奇異常高原子価コバルト酸化物CaCoO3の高圧合成に成功し、構造解析と磁性・伝導性、さらにらせん磁性発現の可能性に言及した論文をPhys. Rev. B誌にまとめた(T. Osaka et al., Phys. Rev. B 95, 224440 (2017))。さらに、固溶系Sr1-xCaxCoO3の高圧合成にも成功し、この系の構造機能相関の全容解明に成功した(投稿準備中)。また、Fe4+を内包する新規ペロブスカイト型酸化物の物質・物性開拓も進むなど、当初の計画以上に早いペースで研究が進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はペロブスカイト型構造をもつ異常高原子価鉄酸化物と異常高原子価銅酸化物の開拓に力を入れる。前者の候補としては、多彩なトポロジカルらせん磁性を示すSrFeO3のAサイト置換系を想定しており、SrFeO3が示すmulti-qらせん磁性相の発現メカニズムの解明を目指す。後者の候補としては、Aサイトに価数の自由度のあるペロブスカイト型銅酸化物ACuO3を想定しており、金属的伝導性を示す低次元銅酸化物の開拓を目指す。
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