2017 Fiscal Year Annual Research Report
電子・プロトンのダイナミック操作に基づく分子機能材料の開発
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17H01197
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 治 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (80270693)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分子性固体 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロトンと電子の共役を用いた新しい機能性物質開発に関する研究が進んでいる一方で、電子の持つ自由度の一つであるスピンとプロトンが共役した固体物質の開発例は少ない。そこでこれまで報告されていないプロトン共役スピン転移の実現と、共役に基づく新機能の開拓を目指して研究を行った。 プロトン共役スピン転移を実現するため、ピリジン環とヒドラゾン部位との間で分子内水素結合を形成するNNO型のヒドラゾン配位子(HL)を設計し、鉄二価錯体 [FeII(HL)2]を合成した。ヒドラゾン部位の窒素は配位部位と隣接し、かつπ共役で結ばれている。このため、スピン転移に伴う金属-配位子間の電荷の移動は、π共役を通じてヒドラゾン部位の酸性度に影響を及ぼす。また、逆にヒドラゾン部位のプロトン化-脱プロトン化は、π共役を通じて中心金属の配位子場に影響を与えると考えられる。 合成した物質はスピン転移とプロトン移動が共役した現象-プロトン共役スピン転移-を示すことが分かった。スピン転移挙動は [FeII(HL)2]錯体のメスバウアースペクトルから確認した。また、高温相、低温相における [FeII(HL)2]錯体の単結晶構造解析を行い、プロトンドナー/アクセプター部位の結合角、及び差フーリエ図から、高スピンから低スピンへの変化に伴い、配位子中でプロトンがヒドラゾン部位からピリジン環側に移動することを明らかにした。プロトン共役スピン転移挙動は赤外吸収スペクトルと量子化学計算の比較によっても確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロトンとスピン転移が連動する物質を開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトン共役スピン転移を示す物質の物性を明らかにする。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Field-Induced Slow Magnetic Relaxation in an Octacoordinated Fe(II) Complex with Pseudo-D2d Symmetry: Magnetic, HF-EPR, and Theoretical Investigations2017
Author(s)
Guo-Ling Li, Shu-Qi Wu, Li-Fang Zhang, Zhenxing Wang, Zhong-Wen Ouyang, Zhong-Hai Ni, Sheng-Qun Su, Zi-Shuo Yao, Jun-Qiu Li, and Osamu Sato
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Journal Title
Inorg. Chem.
Volume: 14
Pages: 8018-8025
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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