2018 Fiscal Year Annual Research Report
電子・プロトンのダイナミック操作に基づく分子機能材料の開発
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17H01197
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 治 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (80270693)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プロトン |
Outline of Annual Research Achievements |
プロトン結合スピン転移の光制御を目指し検討を行った。プロトン結合スピン転移錯体の金属-配位子間の電荷移動吸収バンドを光励起し(波長532 nm)、光照射前後の磁気特性を測定した。その結果、光照射によりxT値が増大することが分かった。これは、低スピン錯体が高スピン錯体に変化し、光誘起高スピン状態が低温で準安定相としてトラップされたことを示している。また、光照射後のxT値からほぼ100%の錯体が高スピン状態に変化することを確認した。光照射後、温度を上げると約90 K付近でxT値が光照射前の値に戻った。これは、光で誘起された準安定高スピン状態が、基底状態である低スピン相に緩和したことを示している。また、光照射前後のIRを測定したところ、光照射後の準安定相のスペクトルが高温相のスペクトルと一致していることが分かった。このことは、光照射後の構造が高温相の構造と同一であり、光誘起スピン転移に伴って、ピリジン環からヒドラゾン部位へのプロトン移動が誘起されたことを示しているいる。さらに、光誘起準安定相が低温で極めて長い緩和寿命を有することを利用して、光照射前後の単結晶構造解析を行った。その結果、プロトンドナー/アクセプター部位の結合角の変化から、スピン転移に伴ってプロトンがピリジン環からヒドラゾン部位へ移動していることが確認できた。以上の実験結果から、今回開発したプロトン共役スピン転移を示す鉄二価錯体 [FeII(HL)2] は、プロトン-スピン結合により光誘起スピン転移現象に伴ってプロトン移動が誘起され、準安定のプロトン移動状態が低温でトラップされることが分かった。すなわち、プロトン移動とスピン転移の共役を利用して、プロトン移動を光で制御することに成功したと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロトン移動とスピン転移の共役を利用して、プロトン移動を光で制御することに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトン移動とスピン転移が連動して発現する鉄二価錯体を開発すると共に、電場誘起プロトン移動を介した電場誘起スピン転移の実現を目指す。
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Research Products
(1 results)