2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H01201
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西林 仁昭 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40282579)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | アンモニア / モリブデン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、前年度までに達成した架橋窒素分子の切断反応を鍵段階として進行する新しい反応経路による触媒的アンモニア生成反応について、反応機構の考察を行うことを目的として、触媒の置換基効果について検証を行った。ピリジン骨格を含むPNP型ピンサー配位子を持つモリブデントリヨード錯体に対して、ピリジン環の4位に電子供与性基及び電子求引性基を導入して、触媒活性への影響の有無を検討した。その結果、当初の予想に反して、電子求引性基を導入した錯体を触媒として利用した場合に触媒能が向上する結果が得られた。この結果は新しい反応経路を経由する触媒反応系では、プロトン化段階ではなくて、還元段階が律速段階に含まれていることを示している。この置換基効果は、従来の窒素架橋二核モリブデン錯体を触媒として利用した場合の置換基効果とは全くの対照的な結果となっている。一方、モリブデントリヨード錯体のヨウ素配位子を同じハロゲン配位子である塩素や臭素配位子に代えたモリブデントリハライド錯体を設計・合成し、ヨウ素配位子を用いた場合が最も高活性を示すことを明らかにした。この結果は、ハロゲン配位子はヨウ素配位子>臭素配位子>塩素配位子の順に、電子求引能が低下するこれまで報告されている結果と一致した。つまり、モリブデントリヨード錯体が最も有効な触媒として働くのは、ヨウ素配位子がハロゲン配位子の中では最も電子引性基として働いている結果であることを示している。一連の研究成果は、より高活性な反応系を開発する上で、重要な知見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
開発に成功した架橋窒素分子の切断反応を鍵段階として進行する新しい反応経路による触媒的アンモニア生成反応について、置換基効果の検証に成功した。また、予備的な知見として触媒反応の速度論的検討を行い、触媒、還元剤、プロトン源に関する反応次数を決定することにも成功している。これらの反応速度論の結果は、従来の窒素架橋二核モリブデン錯体を触媒として利用した場合の置換基効果とは全くの対照的な結果となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、開発に成功した架橋窒素分子の切断反応を鍵段階として進行する新しい反応経路による触媒的アンモニア生成反応に関する研究成果を踏まえて、これまで比較的高価で合成する必要があった還元剤やプロトン源を、安価で入手容易な化合物を用いた新たな反応系の開発に取り組む。特にプロトン源としては、従来の反応系では窒素錯体との反応で容易に対応するオキソ錯体が生成することが知られている水を適用することを試みる。
|
Research Products
(45 results)