2018 Fiscal Year Annual Research Report
弾性率制御ハニカム多孔膜とラマン計測による幹細胞のメカノトランスダクション解明
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17H01223
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藪 浩 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (40396255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西浦 廉政 東北大学, 材料科学高等研究所, 特任教授 (00131277)
加藤 竜司 名古屋大学, 創薬科学研究科, 准教授 (50377884)
中嶋 健 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (90301770)
松尾 保孝 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (90374652)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自己組織化 / ハニカムスキャフォールド / ラマン散乱 / 微粒子 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに磁性ナノ粒子を導入した金ナノ粒子ポリマーコンポジット微粒子の作製と、近赤外光による吸着分子のラマン散乱増強、および磁石を用いた金ナノ粒子ポリマーコンポジット微粒子の任意の場所への操作が顕微鏡下で可能であることを明らかとし、その成果を論文(ACS Applied Nanomaterials (2018))として出版した。また、微粒子表面にブロック共重合体の相分離を用いてパッチ状のドメインを形成し、ドメイン上において特異的な化学修飾を行うことに成功した。この成果は微粒子の表面で抗原や抗体などを特定の領域に制御して配置できるプラットフォームを形成する物であり、その成果を論文として発表した(Advanced Functional Materials (2018))。また、これら2つの成果を東北大からのプレスリリースという形で発信した。さらに異方的な構造を持った有機-無機コンポジット微粒子がラマン散乱だけで無く蛍光も異方的に増強できることを示し、その成果を論文として発表した(Particles and Particle Systems Characterization (2019))。これらナノ構造を持つポリマー系ナノ微粒子の3次元形態形成を説明し,その形態を予測できる数理モデルの作成をCahn-Hillard型連立偏微分方程式の形で行い,実験結果との整合性を検証した。ハニカムスキャフォールド上での間葉系幹細胞6ロットについての、分化傾向(骨・脂肪)および増殖などの品質と画像から得られる細胞形態情報との網羅的な相関結果を得た。またこれにiPS細胞および神経系細胞へとデータベースを拡張し、特徴的な分化制御能を与える材料表面条件の基礎データを得た。最終年度その再現性を確認し、細胞形態からの予測モデルを完成させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイルストーンとしていた局所部位における近赤外光励起の表面増強ラマン散乱分光が可能であることを明らかとし、ハニカムスキャフォールド上でいくつかの種類の幹細胞の分化傾向および形態情報の網羅的なデータを得ることに成功した。微粒子の構造制御と機能化に関する代表的な成果は査読付き国際科学ジャーナルにおいて発表され、大学よりプレスリリースすることで本研究の成果を広くアピールできた。細胞系の実験は時間がかかるにも関わらず、間葉系幹細胞や脂肪系幹細胞のみならず、iPS細胞や神経系細胞へのデータベース拡張にも取り組んでおり、予想以上の成果を上げている。理論系においてもナノ構造制御に関する理論構築に進展が見られ、それを基に微粒子の構造制御指針が確立されつつあり、現在その成果の一部は投稿中である。また、培養細胞の形態に関しても理論構築を進めている。今後ハニカムスキャフォールドの弾性率測定に関してのデータと、ハニカムスキャフォールド上での上記細胞の分化や形態に関する網羅的データ、近赤外励起のラマン散乱分光による化学動態に関する網羅的なスペクトルデータが揃うことにより、進行中の理論モデルの信頼性向上が見込まれる。以上の結果より、本研究はおおむね順調に進展しており、一部は予想以上の成果を上げており、分担者を含めた共同研究ネットワークを基に、最終年度に向けてこららの成果を統合するべく研究を継続して発展する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに磁場応答性を持つラマン散乱微粒子により局所的なラマン散乱測定が可能な有機ー無機コンポジット微粒子の作製に成功した。こ れにより細胞の望む位置でのラマン散乱スペクトルを得ることが可能となり、これは細胞内の各部所で起こる化学的イベントの総和を反映した 指紋情報を得ることができる。本技術をハニカムスキャフォールド上で培養した幹細胞に適用することで、細胞培養の各段階におけるラマン散 乱スペクトル情報を集積し、このデータを昨年度までに集積した幹細胞の分化にハニカムスキャフォールドの力学的・構造的因子が与える影響 との相関結果と照合することにより、細胞内で起こる化学的イベントと細胞分化というマクロなイベントとの相関を、時間的・空間的に明らか とする。これらのデータの相関を明らかにするためには、膨大な細胞の画像データやスキャフォールドの力学特性・構造データ、およびラマン 散乱スペクトルデータを統合的にデータ処理する必要があるため、多変量解析の技術を用いて各パラメータの相関を機械学習などの数理科学の 解析手法を駆使して処理を行う。さらにパラメータの相関から影響を与える因子を抜き出し、モデル化することにより、ハニカムスキャフォー ルド上での幹細胞の動きや分化をモデル化することにより、Phase Fieldモデルなどの手法によりハニカムスキャフォールド上での幹細胞の挙 動や分化の方向性を予測する数理モデルを構築する。
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Research Products
(12 results)