2018 Fiscal Year Annual Research Report
精密構造解析・理論化学計算による有機デバイスの基礎科学構築
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17H01231
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶 弘典 京都大学, 化学研究所, 教授 (30263148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志津 功將 京都大学, 化学研究所, 助教 (10621138)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機EL / 固体NMR / 分子配向 / マルチスケールシミュレーション / 理論計算 / TADF |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、本研究の基盤であるTADFの開発、また、それらの発光材料を用いた高効率有機ELデバイスの作製をさらに進めた。また、もう一つの柱であるin silico電荷輸送解析に関し、さらなる展開を進めた。さらに、DNP-NMRの基盤構築を進めた。 新規TADF材料開発:ドナー-アクセプター間をフレキシブルなリンカーで連結することにより、分子内のみならず分子間電荷移動も利用したTADFを示す新規材料の開発に成功した(Appl. Mater. Interface, 2019, 11, 7192)。溶液プロセス材料では、カルバゾールとベンゾフェノンを用いた、TADF材料を開発した(Chem. Lett., 2018, 47, 1236)。 有機EL素子開発:これまでに我々が開発したTADF発光材料DACT-IIを用い、超高効率緑色有機EL素子の開発に成功した(Adv. Opt. Mater., 2018, 6, 201800376)。また、ホスト材料の三重項エネルギーを精密に制御することにより、ランジュバン再結合を利用したTADF有機ELデバイスの寿命を、大幅に向上させることが可能であることを明らかにした(Appl. Mater. Interface, 2019, 11, 1096)。 マルチスケール電荷輸送シミュレーション:HOMOやLUMOのみでなく、他の分子軌道の寄与も考慮することにより、任意性のある可変パラメータを一切用いることなく、正孔移動度、電子移動度ともに、実測データをこれまでより遥かに高い精度で再現することに成功した (Sci. Rep., 2018, 8, 134962)。 NMR:2017年度末、アジア圏で初めて導入された汎用DNP-NMR装置を一年を通して安定稼働することができた。また、多くの材料に対し、数倍から高いもので200倍を超える感度向上を達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、主に有機EL材料とデバイス研究、また、マルチスケールシミュレーションに関して大きな成果を上げることができた。 新規材料に関してはドナー部位とアクセプター部位をフレキシブルなσ結合で連結することにより、分子内、分子間電荷移動によるTADFを発現する材料の開発に成功し、この材料がホスト材料として有用であることを示した。本研究は、国際学術雑誌Applied Materials & Interfaces誌に掲載された。また、through-space系のTADF材料を新たに設計し、世界トップの性能を得ることにも成功している(現在論文投稿中、特許申請済み)。 有機ELデバイスに関しては、デバイス構造の精密な最適化により、りん光有機ELと同等以上の電力効率(133 lm/W)を示すデバイスの開発に成功した。この成果は国際学術雑誌Advanced Optical Materials誌に掲載された。 マルチスケールシミュレーションに関しては、有機非晶系においてHOMOやLUMOだけでなく、HOMO-1やLUMO+1といった他の分子軌道が電荷輸送に大きく寄与していることを、今回、世界に先駆けて明らかにした。また、これらの寄与を考慮することにより、有機非晶膜における移動度を、ホール、電子ともに、これまでよりも遥かに高い精度で再現することが可能となった。この成果は国際学術雑誌Scientific Report誌に掲載された。 以上のように、研究は極めて順調に、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、当初の予定を超えた、次の3つのTADF材料関連の研究を進展させたい。1) Through space系TADF材料は、当初の予定を超えた研究であるが、昨年度すでに、優れた特性を有する材料開発に成功している。今年度は、この萌芽的研究でえられた設計指針をさらに発展させる。2) 世界的に見ても開発の遅れている赤色TADF材料について開発を進める。3) さらにTADF-assisted fluorescence有機ELへの展開も新たに進めるとともに、singlet fissionに関する研究も進める。 マルチスケールシュミレーションに関しては、本年度確立したシミュレーション手法を、有機ELの発光層(ホスト-ゲスト混合系)や、有機ELデバイスを模した多階層膜系へと展開を進めるとともに、高移動度材料の分子設計へと発展させていく。 NMRに関しては、デバイス解析を行うための基盤構築をさらに進める。特に、DNP-NMR装置により、TADF材料の有機非晶膜中における構造解析を進めるとともに、デバイス劣化解析を進める。
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[Journal Article] Synthesis and characterization of cyclic P3HT as a donor polymer for organic solar cells2019
Author(s)
Fukushima, T., Ishibashi, H., Suemasa, D., Nakamura, R., Yomogida, M., Isono, T., Satoh, T. and Kaji, H.
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Journal Title
J. Polym. Sci., PartB: Polym. Phys.
Volume: 57
Pages: 266-271
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Thermally Activated Delayed Fluorescent Materials Combining Intra- and Intermolecular Charge Transfers2019
Author(s)
Zhang, DD., Suzuki, K., Song, XZ., Wada, Y., Kubo, S., Duan, LA. and Kaji, H.
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Journal Title
ACS Appl. Mater. Interfaces
Volume: 11
Pages: 7192-7198
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Unveiling the Role of Langevin and Trap-Assisted Recombination in Long Lifespan OLEDs Employing Thermally Activated Delayed Fluorophores2019
Author(s)
Cai, M., Zhang, D., Xu, J., Hong, X., Zhao, C., Song, X., Qiu, Y., Kaji, H. and Duan, L.
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Journal Title
ACS Appl. Mater. Interfaces
Volume: 11
Pages: 1096-1108
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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