2018 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanics of creep fracture in metallic nanostructures
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17H01239
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平方 寛之 京都大学, 工学研究科, 教授 (40362454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 俊之 大阪大学, 工学研究科, 助教 (70735042)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノマイクロ材料力学 / 破壊力学 / クリープ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,透過型電子顕微鏡(TEM)によるその場観察クリープ実験方法を開発して,局所力学場を制御した種々のクリープ実験を実施することにより,金属ナノ構造体特有のクリープ機構を解明して,クリープ破壊の力学基盤を構築することを目的とする.本年度の研究実績は以下の通りである. 1.クリープ変形機構と支配力学の解明のための各種クリープ実験: 平成29年度に確立したクリープ実験方法によりナノ試験片に対するクリープ実験を実施した.単結晶Auに対して,試験片幅・厚さを約500 nm~1500 nmの範囲で変えたクリープ変形実験を行い,クリープ特性に及ぼす寸法効果を検討した.その結果,寸法の縮小に伴いクリープ速度が低下する,すなわち小さいほどクリープ変形抵抗が大きくなる寸法効果が存在することを明らかにした.さらに,金属ナノ構造体の微視的なクリープ機構を解明するため,試験片幅・厚さが約500 nmである単結晶Alに対するその場TEM観察クリープ試験を実施した.その結果,クリープ試験中の断続的な転位の増殖および排出過程をその場観察することに成功した.さらにFIB加工により切欠きを導入した単結晶Al試験片に対するクリープ破壊実験に着手して,切欠きを起点とするクリープ破壊特性に関する基礎検討を行った. 2.加熱機構付試料ステージによる高温下クリープ実験方法の確立:クリープは熱活性に起因する現象であり,支配機構は温度に依存する.また,支配機構を解明するには活性化エネルギーの評価が有効である.そこで,その場TEM 観察クリープ実験システムに,試料加熱機構の組込み調整を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに計画していた,1.クリープ変形機構と支配力学の解明のための各種クリープ実験を順調に実施しており,また,2.加熱機構付試料ステージによる高温下クリープ実験方法の確立を概ね計画通りに遂行できた.1.において単結晶Al試験片に対するその場TEM観察クリープ試験に成功して,室温下ではクリープ変形が転位の増殖と排出によりもたらされることを解明した.さらに,2.のシステムも確立したことで,高温下での試験を可能にした.これらに加えて,切欠きを導入した試験片に対するクリープ破壊実験に関する基礎検討を終了した.
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Strategy for Future Research Activity |
1.各種クリープ実験:確立したその場TEM観察クリープ実験方法によりナノ試験片に対するクリープ実験の追加実験を行いデータの拡充を図る.とくに,切欠きを導入した試験片に対するクリープ実験を実施する.切欠き先端曲率半径や切欠き深さを変えることで応力(ひずみ)の局所性を変え,それらの結果を統一的に説明できる力学法則を検討する.高倍率その場TEM観察により切欠き底近傍の形状変化を観察して,必要に応じてデジタル画像相関法を用いて,試験片の変位場を評価する.これを基に局所変位速度場を特徴づける力学量を評価して,クリープ破壊との関係を解明する.また,粒界を介した機構によるクリープ破壊の支配力学を検討する. 2.試験片加工損傷を低減したクリープ実験:FIBによって生じる加工損傷層のTEM観察より,加工により試験片に転位が導入されることが判明した.また,当初計画していた低エネルギーArイオンエッチングでは十分に加工損傷層を除去することができなかった.この影響を排除するため,自己組織化(高温斜め蒸着法)により成長させた単結晶ナノ構造体に対するクリープ試験方法を確立する.FIB損傷のない試験片に対するクリープ試験結果と比較検討することにより,評価したクリープ特性の一般性を解明する. 3.解析・理論的検討およびクリープ変形機構と支配力学の解明:蓄積した各種条件下でのクリープ特性(局所変位速度,き裂発生寿命など)をもとに,一般性のあるクリープ破壊の支配力学を検討する.ナノ構造体のクリープ特性を考慮した応力解析を実施して,切欠き底近傍の局所応力場を評価する.TEM観察による転位構造およびその時間変化等の実験観察結果との対照により機構を議論するとともに,局所応力場を評価する.実験および解析より得られた局所力学場を特徴付ける各種力学量とクリープ破壊の関係を検討して,クリープ破壊の支配力学を解明する.
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Research Products
(5 results)