2018 Fiscal Year Annual Research Report
新規窒化物半導体のインシリコデザインと材料創成・デバイス化への展開
Project/Area Number |
17H01318
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大場 史康 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (90378795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤松 寛文 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10776537)
平松 秀典 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (80598136)
田中 功 京都大学, 工学研究科, 教授 (70183861)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 窒化物半導体 / 第一原理計算 / 点欠陥 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から継続して、窒化物半導体の系統的な理解と新物質探索のための計算・実験手法の開発及びその応用を進めた。計算に関しては、基礎物性、熱力学的安定性、格子欠陥特性の第一原理計算の高精度・高速化により、窒化物半導体の系統的評価を可能とする理論設計・予測基盤を構築するための手法の開発を行った。この計算手法を応用することで、これまで安定したp型ドーピングが困難であった窒化銅について、フッ素化学ドーピングが有効であることを理論的に予測し、実験グループと連携することで高移動度p型薄膜の実現につなげた(Advanced Materials 2018)。また、太陽電池光吸収層材料として近年注目を浴びているZnSnN2のカチオンの不規則化や固有点欠陥形成・不純物混入に関する詳細な理論的検討を行い、その電子構造及び伝導キャリア濃度への影響を明らかにした。(Physical Review Applied 2018)これらは、本研究が目指す新規窒化物半導体の設計・探索及び既知窒化物半導体の系統的理解に関する成果であるとともに、今後の展開に関する有益な知見を与える結果である。また、開発したプログラムを用いて、新規窒化物半導体の探索のためのハイスループットスクリーニングを開始した。 実験に関しては、昨年度に引き続き窒化物及び比較対象の多彩な関連化合物について、焼結体合成及び製膜の条件の検討並びに半導体物性・電子状態計測を進めた。とくに、2元系窒化亜鉛及び類縁の3元系窒化物に関して、固溶体化によるバンドギャップ制御や薄膜化の実現等の成果が得られた(論文2編を投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算に関しては、昨年度に引き続き基礎物性及び格子欠陥特性の理論予測基盤の構築のためのプログラム開発を進めるとともに、上述のような2元系及び3元系窒化物半導体の固有点欠陥の形成挙動及びドーピングの理論予測に応用した。これにより、個々の物質の特性の最適化や新機能発現に関して具体的な結果を得るとともに、今後の新規窒化物半導体の設計に関する重要な知見が得られた。また、計算の自動実行のためのプログラム開発を継続することで、本研究の主目的である新規窒化物半導体の設計及びハイスループットスクリーニングによる探索を行うための基盤技術が当初予定通り構築でき、実際に候補物質のスクリーニングを開始した。実験に関しては、これまでに高圧合成に頼っていた亜鉛系窒化物の合成に関して、研究計画通り薄膜化が実現できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに開発した第一原理計算に基づいた窒化物半導体の設計及びハイスループットスクリーニングによる新物質探索のためのプログラムを高度化し、その応用と検証実験を継続する。スクリーニング手法に関しては、候補物質の安定性、物性、格子欠陥特性を高精度かつ高速に評価するため、第一原理計算による直接予測と系統的計算結果の機械学習による予測モデルを併用した手法の開発を行う。このために、既知物質に関する計算データのデータベース化をさらに進めるとともに、予測モデルの高精度化を検討する。また、有望と判定された物質について、ギブズ自由エネルギーを温度、圧力の関数として算出し、より詳細な安定性の評価を行うとともに、合成に適した条件の提案を目指す。さらに、点欠陥及び表面、界面の特性まで考慮して、様々な既知窒化物半導体の理論的検討を継続することで、窒化物半導体の系統的な理解を進める。また、今年度に本格的に開始した新規窒化物半導体の探索のためのハイスループットスクリーニングを継続し、有望物質の提案を目指す。実験に関しては、今年度に薄膜化に成功した亜鉛系窒化物に関する経験に基づいて他の窒化物半導体の製膜へと展開するとともに、薄膜の電子・光学物性の評価を進める。
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