2018 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of the method for evaluating fracture properties of ceramics in mesoscale and elucidation of the relationship between them and microstructural factors
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17H01319
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
多々見 純一 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (30303085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 裕美 豊橋技術科学大学, 教育研究基盤センター, 教授 (00319500)
伊藤 暁彦 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (20451635)
高橋 拓実 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 「革新的高信頼性セラミックス創製」プロジェクト, 研究員(任期有) (30715991)
飯島 志行 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (70513745)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セラミックス / 破壊 / メソスケール / 強度 / 破壊靱性 / 塑性変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、セラミックスの破壊を支配するメソスケール破壊特性の評価法確立と微構造因子との相関解明、および、これを活用した高信頼性材料の設計と創製である。環境エネルギー分野や安心安全な社会を支える材料の研究開発が進められているが、その社会実装に不可欠な機械的信頼性の向上、および、その基礎となる破壊現象の理解は十分ではなかった。本研究は、研究代表者が開発したマイクロカンチレバー試験片を用いたメソスケール破壊特性評価法をさらに発展させたものであり、ここで得られる成果は破壊現象の理解に基づく高信頼性設計による各種セラミックスの社会実装に大きく貢献するとともに、多岐にわたる学術分野への波及も期待される。本年度は、平成29年度に確立された破壊特性評価法を各種材料に展開した。単結晶Siでは、TEM観察によるナノスケールの構造解析と合わせることで、メソスケールの強度や塑性変形が転位に起因した現象であることを見いだした。単結晶SiCでは、その強度が単結晶Siと同様に寸法効果を示すこと明らかにするとともに、より小さな試験片の曲げ強度が56GPaと極めて高い値となることを見いだした。この値は第一原理計算で予想される理想強度と同程度であるとともに、従来ウィスカーなどで測定されてきた強度よりも高い値であり、炭化ケイ素等のセラミックスの中で世界最高の実測強度である。CVD法で作製した非晶質SiCの曲げ強度は、単結晶よりも低いものの高い強度を示すことがわかった。MLCC中のBaTiO3についてもマイクロカンチレバー試験片を作製して破壊特性を評価したところ、曲げ試験であるにもかかわらず強弾性ドメインスイッチングを示すこと、4GPa程度の高い強度を示すことを初めて明らかにした。このような知見は、機能性材料の信頼性向上に重要な基礎的知見になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、前年度に引き続き、各種材料を用いてメソスケール破壊特性評価を行った。まず、平成29年度にも用いた単結晶Siを試料とし、塑性変形が生じた後、除荷した試験片から薄片試料を作製してTEM観察を行った。その結果、高い引張応力が作用した領域にのみ、転位が集中して存在していることが明らかとなった。その中でも特に集中している領域の寸法は、強度と破壊靱性から算出した等価き裂長さとほぼ同程度であったことから、数ミクロン程度の試験片では新たに発生した欠陥が単結晶Siの強度を支配することが明らかとなった。次に、単結晶SiC、CVD法で作製した非晶質SiCにマイクロカンチレバー試験片を作製し、メソスケールの破壊特性を評価した。その荷重変位曲線は、単結晶Siと同調に荷重が変位に対して線形に増加した後、非線形変形することが確認された。単結晶SiCの曲げ強度は、試験片寸法に依存し、試験片寸法の減少とともに増加した。特に、幅と高さがサブミクロンのマイクロカンチレバー試験片を用いて得られた強度は56GPaとなり、第一原理計算で得られる理想強度とほぼ同じ値が実測されることを見いだした。非晶質SiCの強度は、単結晶SiCよりは低いものの33GPaと高い値となった。非晶質SiCの破壊靱性は単結晶SiCのものよりも低く、強度と同様の蛍光にあることを見いだした。さらに、従来の手法では評価することのできないMLCC中のBaTiO3層にマイクロカンチレバー試験片を作製してその破壊特性を評価したところ、低応力領域では線形に変形した後、BaTiO3の強弾性ドメインスイッチングに起因すると考えられる1%程度の大きな変形を示した。また、その強度は約4GPaであり、一般的なBaTiO3セラミックスのものよりも極めて高いことが示された。以上の理由により、本研究はおおむね計画通りに進展しており、その一部では当初の計画以上に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度には、メソスケール破壊特性評価を各種材料・各種特性評価に展開する。まず、単結晶Siに作製した単結晶Siにマイクロカンチレバー試験片に繰り返し荷重を印加した疲労試験を行う。単結晶Siで得られた手法と知見を活かして、単結晶SiCおよび非晶質SiCのメソスケール破壊特性評価と微構造因子との相関解明を進める。次に、平成30年度に測定したMLCC中のBaTiO3層のメソスケール破壊特性評価で得られた成果を、より詳細に解明するために、単結晶BaTiO3を用いた実験を進める。その解析には、ハイブリッドナノフラクトグラフィーで培った走査型プローブ顕微鏡観察をベースとした手法を適用する。また、これまでは大気中でのメソスケール破壊特性評価を行ってきたが、測定環境が破壊特性②大きな影響を及ぼすと予想されることから、水中での破壊特性評価を試みる。試料としては、単結晶Si、石英ガラス、ソーダライムガラス、窒化ケイ素セラミックスを用いる。最終的には、全体を取りまとめて手法の確立とメソスケール破壊特性と微構造因子の相関解明を進める。
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Research Products
(12 results)