2017 Fiscal Year Annual Research Report
Material design for microscale load sensor having bio-degradability
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17H01327
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
向井 敏司 神戸大学, 工学研究科, 教授 (40254429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯野 吉正 神戸大学, 工学研究科, 教授 (20257819)
福本 巧 神戸大学, 医学研究科, 教授 (70379402)
池尾 直子 神戸大学, 工学研究科, 助教 (80647644)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生体材料 / 生体内分解性金属 / 検力センサー / 粒界偏析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内分解性インプラントは経時に伴い体内で分解されるため、抜去手術を必要としないデバイスとして注目されている。本研究ではインプラントの分解に伴う力学的強度をリアルタイムでモニタリングできるシステムの構築を目標としている。平成29年度には、第一原理計算に基づく分解性マグネシウム合金の最適組成設計、ヘテロ構造の形成を通じた強靱化の試行、蒸着による金属皮膜形成の予備的試行および分解性を評価するための研究を推進した。 分解性Mg合金の最適組成設計については、カルシウムならびに生体為害性が低い元素を第三元素として添加した場合の強度および変形能に及ぼす効果を第一原理計算により予測した。ここでは、三元Mg合金として、溶質元素および原子数; Ca: 1, 第三元素X (Mn, Mo, Co, Cu, Si, Ag, K, Sr, Ba): 1を設定し、粒界モデルには界面エネルギーが比較的高い対応粒界{11-21}を適用した。はじめに、偏析エネルギーを計算し、安定な原子配置を決定した。その後に、各合金の粒界凝集エネルギーを算出した。計算の結果、カリウムは粒界を脆化し、マンガンは粒界を強化する第三元素となることがわかった。計算結果に基づき、Mg-Ca-KおよびMg-Ca-Mn合金を作製し、機械的性質を評価した。その結果、これらの第三元素は強度に及ぼす影響は低いものの、破断ひずみはカリウム添加により減少し、マンガン添加合により増大することを確認した。第三元素が粒界強度へ及ぼす影響を計算により予測し、壊れにくくなる効果を実験により検証することができた。 金属皮膜の蒸着試験については、マグネシウム表面へシリコンを蒸着する予備試験を実施した。膜厚50nm~2μmの範囲で皮膜を形成し、その後に、E-MEM擬似体液中における分解性を定量評価したところ、表面被覆により分解性速度は低減可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画へ記載したように、第一原理計算に基づく分解性マグネシウムの最適組成設計、ヘテロ構造の形成を通じた強靱化原理の解明、蒸着によるマイクロ検力センサーの形成および蒸着被覆による分解性制御、分解に伴う周辺組織細胞の反応から生体安全性を評価する手法を確立するための研究を推進する。 平成29年度に実施した内容は、研究実績の概要にて記述した通りである。分解性金属として、Mg-Ca-X三元合金を選定し、計算予測と合金試作により、当初に目標とした新しい合金を作製することができた。また、マグネシウムと比較して、分解速度を低減することが可能な亜鉛系合金も本研究における素材対象として有望であることから、計算予測の手法を二元の亜鉛合金へ展開し、一部の計算に着手した。これにより、強度-靭性-分解性バランスの範囲を拡張することが期待される。また、蒸着による皮膜形成については、シリコンを用いた予備的試行が完了した。次年度には、その他合金系の蒸着に移行する予定である。 以上のように、当初の計画通りに計算および実験研究を推進している。また、生体内分解性を示す他の合金系へ適用範囲の拡大を図っており、本事業は概ね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘテロ構造制御として実施する結晶粒微細化については、これまでに実施している押出成形と併せて、平成30年度から細線ワイヤーの創製研究に着手し、当初の予定通りに実験研究を推進する予定である。 なお、マグネシウム製検力センサーの作製はこれまでに経験が無いため、センサーとしてのゲージ率が不明であり、検力センサーとして所望の出力が得られない場合も想定される。一方で、シリコンも水溶液中で分解することから、マグネシウムデバイスの表面にシリコン薄膜を蒸着した後にシリコン半導体を形成し、長さ100μm 程度の半導体検力センサーをデバイス表面に構成することも可能である。分解性を有する半導体センサーを、マグネシウム製検力センサーの代替とすることも可能であることから、シリコン半導体センサーの創製を並行して進めることとした。この追加計画を推進するため、半導体センサーの研究開発に精通した若手研究者を、平成30年度からの研究分担者として登録申請することとした。 以上のように、必要に応じて研究体制の増強を図りながら、当初計画に遅滞が生じないように研究を推進する予定である。
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