2018 Fiscal Year Annual Research Report
金属用3Dプリンタで形状だけでなく内部組織を自在に制御するための材料科学
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17H01329
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小泉 雄一郎 大阪大学, 工学研究科, 教授 (10322174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 晶彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (00197617)
山中 謙太 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (30727061)
福山 博之 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40252259)
青柳 健大 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90636044)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 凝固マップ / 熱流体力学シミュレーション / 柱状―等軸遷移(CET) / IN718合金 / Co-Cr-Mo合金 / フェーズフィールド法 / 組織制御 / 粉末床溶融結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、単純な条件でバルク材に種々の条件でEBを照射し、溶融ビード断面の各位置の凝固組織を観察するとともに熱流体力学シミュレーションにより温度分布変化を求め、凝固界面での温度勾配(G)と凝固速度(R)、流速(U)を評価し、GとRと凝固組織の関係を凝固マップの形式で整理することで、GとRと凝固組織の関係は従来の柱状―等軸遷移(CET)のみでは説明できないことを見出し、CETへの下地結晶組織の影響や流動の影響の重要性を明らかにした。今年度は同手法を、Co-Cr-Mo合金、Inconel718合金、SUS304合金にも適用し、各合金の融体の熱物性や熱力学的性質がG-R-U値と組織との関係に及ぼす影響についてのデータを拡充した。さらに、Co-Cr-Mo合金の融体物性として、昨年度の密度に続き、熱容量、熱伝導率およびその温度依存性を静磁場印加電磁浮遊法により精密に測定することにも成功した。今後はこれらを用いてさらに正確な熱流体力学シミュレーションと高精度化な組織予測を行うことができる。さらに粉末床(造形途中の部材の最上面に形成される粉末粒子の層)が存在する場合のビーム照射による溶融・流動・凝固過程のシミュレーションにも成功し、より実際の造形プロセスに近い凝固条件での推定も可能となった。また、バルク体の造形における凝固条件を、気孔などの欠陥を生じることなく大きく変化させるAdaptive Offset法に基づいた直方体試料の造形も行った。造形体の組織を等方的組織から強い配向をもつ単結晶状柱状組織まで作り分けることに、IN718合金に加えてCo-Cr-Mo合金の造形においても成功した。今後はシミュレーションの高精度化と凝固マップの拡充により、造形パラメータ最適化による組織制御の範囲拡大と高精度化を目指すとともに、得られた組織と材料特性の関係を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
造形用ビーム照射による凝固組織の形成の実験的評価と数値熱流体力学を用いることによる流動の影響も含めた凝固条件の評価の組み合わせによる凝固マップ作成の手法がほぼ確立された。それによりCo-Cr-Mo合金やIN718合金以外の合金にも適用可能となった。複数の合金での結果を比較することで、凝固条件と組織との関係を合金の冶金物理化学的特徴(熱力学的性質や熱物性)と結びつけることも可能となった。このことにより、新規合金に対して、多くの実験を必要とせずに組織制御を可能とすることも現実的となった。さらに粉末床(造形途中の部材の最上面に形成される粉末粒子の層)へのビーム照射による溶融凝固挙動の実験ならびにシミュレーション、バルク体造形物の組織制御が可能であることを示す研究成果も得られていることから、当初の計画以上に研究が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題研究の開始から3年目となる2019年度には、粒径や結晶配向等の制御可能な範囲を拡大するとともに、3D積層造形特有の凝固条件での結晶成長挙動に関する学術的知見を拡充するために、多パスでのビーム照射による造形条件(ビーム出力、ビーム走査速度、ビーム走査間隔等)での実験を行い、それらの造形条件と凝固条件との関係データの拡充を行う。中でも、溶融から凝固に遷移する過程での核生成や凝固偏析を、冷却速度0の状態での固液共存状態を出発点とする凝固結晶成長、平衡分配係数からの予測から逸脱した溶質分配といった視点から解析することで、積層造形特有の組織形成メカニズムの本質的解明に迫る。これにより積層造形における組織制御の科学的指針となる新しい凝固学開拓とする。同時に、当初4年目に計画していた造形体の組織と力学特性との関係の評価を前倒しで始めることで、金属積層造形プロセスを活用した組織制御による材料特性の制御のためのデータ蓄積も加速して進めて行く。
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