2017 Fiscal Year Annual Research Report
軽元素のスピノーダルオーダリングを活用した鉄鋼の新規な高強度化原理の構築
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17H01330
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古原 忠 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50221560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 充孝 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10547706)
張 咏ジエ 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40793740)
宮本 吾郎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60451621)
大谷 博司 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70176923)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 結晶・組織制御 / 時効析出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、鉄合金における侵入型元素(I)と置換型元素(S)間の相互作用に注目し、規則化と相分離が重畳する元素クラスタリングについて実験および計算の両面から調べることを目的とする。 今年度は、Fe-0.8C合金の低温焼もどし挙動におよぼす合金元素添加(2mass% Mn、Si、Cr、Al)の影響を示差走査熱量計(DSC)で調べた。連続加熱実験で90℃付近と150℃付近で Cのクラスタリングおよび準安定炭化物析出にそれぞれ対応する発熱ピークが見られたが、ピークの発現温度や高さなどは合金元素の影響は小さいことがわかった。Fe-0.8C合金では,250℃付近に残留オーステナイトの分解とセメンタイト析出がオーバーラップしたピークが見られたが、SiやAlを添加するとセメンタイトのピークが高温側にずれピークが分離することがわかった。Fe-Cマルテンサイトに強い炭化物生成元素(V、Nb、Ti)を添加すると高温焼もどし時に大きな軟化抵抗が見られた。三次元アトムプローブ(3DAP)観察より、この軟化抵抗の原因は主に合金炭化物析出に起因することがわかった。一方低温ではI-Sナノクラスターの生成による転位回復の抑制が軟化抵抗の原因であると考えられる。 純鉄およびFe-1M二元合金を浸窒焼き入れすることで、0.3mass%Nを含有するマルテンサイト材を得ることに成功した。窒化物生成傾向の大きいCr,Mo添加材では,高温焼きもどし時に合金窒化物が生成することで大きな軟化抵抗が得られた。第一原理計算クラスター変分法によるフェライトの自由エネルギーの計算後,クラスター展開により導出したクラスター間の有効相互作用を用いたモンテカルロ計算では、体積の拘束を与えた条件下で、Fe-Ti合金の窒化材の高分解能TEM観察結果と一致する一原子層のTi-Nクラスター生成を再現することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、侵入型元素Iと置換型元素S間の相互作用の観点でFe-C、Fe-Nマルテンサイト焼もどし挙動を理解することを目指している。今年度は、炭素含有合金を用いて低温焼もどしの析出速度の評価手法を確立するとともに,窒素含有マルテンサイトの作製に成功し,種々の条件での焼もどし挙動を調べることに成功した。また,計算科学的手法によるI-S相互作用の導出とクラスタリングの時間発展挙動を再現することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
I-Sクラスタリングおよび炭化物析出反応の速度論に対する合金元素の影響を定量的に評価する。また、低炭素・低窒素鋼の低温焼もどし材について、三次元アトムプローブ(3DAP)および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて,マルテンサイト組織中の転位あるいは粒界における元素偏析およびクラスタリングに注目して組織観察を行う予定である。
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Research Products
(19 results)