2017 Fiscal Year Annual Research Report
鋼本来の再不働態化能力を極限まで引き出すことが可能な金属組織設計指針の構築
Project/Area Number |
17H01331
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
武藤 泉 東北大学, 工学研究科, 教授 (20400278)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 優 東北大学, 工学研究科, 助教 (40599057)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 耐食材料 / 腐食防食 / 炭素鋼 / ステンレス鋼 / 介在物 / 孔食 |
Outline of Annual Research Achievements |
孔食萌芽を研究する技術として、電気化学計測中の試料表面を光学顕微鏡で観察するマイクロ電気化学システムを開発した。特に、1)電極面の電位・電流信号の経時変化と撮影した動画を30ミリ秒以内の誤差で一致させること、2)光学顕微鏡での画像撮影方法を工夫することで位置分解能を約100nmにまで高めることに成功した。さらに、試料電極の面積を100マイクロメートル四方とすることで、光学顕微鏡で観察している領域と試料電極面のサイズを一致させ、電流変化と試料表面の溶解位置を対応させることに成功した。この新システムを用いて、機械構造用炭素鋼とステンレス鋼の孔食発生起点に関して探索的な研究を行った。0.1 M NaClもしくはpHを8.0に調整したNaClを含有するホウ酸緩衝液中で動電位アノード分極曲線を計測し、孔食が発生する過程を30枚/秒のフレームレートの動画として撮影した。その結果、パーライト組織(フェライト/セメンタイトの繰り返し多層構造)を有する機械構造用炭素鋼においては、パーライトを構成しているフェライト相が孔食の起点であることが分かった。フェライト相内の硫黄偏析部が最初に溶解し、フェライト相のみが層状に溶解することを明らかにした。ステンレス鋼ではMnSやCaSなどの硫化物系介在物を起点として孔食が起こることを見いだした。さらに、これらの介在物がリンが偏析した粒界上に存在すると、耐孔食性が大きく低下することが分かった。併せて、セリウムイオンが、介在物起点の孔食発生の防止に対して有効に機能することを見いだした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
孔食萌芽の検出は困難であると予想されたが、電極面の電位・電流信号の経時変化と撮影した動画を30ミリ秒以内の誤差で一致させることと、光学顕微鏡での画像撮影方法を工夫することで位置分解能を約100nmにまで高めることに成功し、機械構造用炭素鋼とステンレス鋼の孔食起点を解明できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
微細粒鋼の作製と孔食萌芽期の腐食停止挙動の解析: 遊星型ボールミルによる超強加工微粉末作製と放電プラズマ焼結により微細粒鋼を作製する。これにより粒界(方位差)、粒界偏析、粒界析出物、異相境界などの孔食萌芽停止効果を定量化する。光学顕微鏡やレーザー顕微鏡を活用し、微細粒鋼に対する解析を行う。侵食形態の時間変化をモニターすることで、孔食(ピット)萌芽の発生と停止に伴う溶液化学的な現象解明を行う。さらに孔食萌芽の痕跡と粒界性状との関係をEBSD、STEM/EELSなどで解析することで、溶液化学的な情報と金属組織学を結びつけた解析を行う。 孔食萌芽の停止のための金属組織の把握: 炭素鋼(フェライト単相、フェライト/パーライト鋼)、ステンレス鋼(オーステナイト単相、フェライト/オーステナイト二相)を基本的な試料とし、メカニカルアロイングによりP、Cu、Vなどの偏析・析出などを意図した元素を添加し、熱処理を施し、金属組織を系統的に変化させた材料に対して研究を行う。EBSDなどに加え、収束イオンビーム加工装置(FIB)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)などの原子レベルでの分析・解析が可能な装置を用い、孔食萌芽の停止をもたらす金属組織学的な要因を特定する。
|
Research Products
(25 results)