2018 Fiscal Year Annual Research Report
鋼本来の再不働態化能力を極限まで引き出すことが可能な金属組織設計指針の構築
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17H01331
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
武藤 泉 東北大学, 工学研究科, 教授 (20400278)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 優 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40599057)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 耐食材料 / 腐食防食 / 炭素鋼 / ステンレス鋼 / 介在物 / 孔食 |
Outline of Annual Research Achievements |
孔食萌芽を高感度で検出する手法として、金属表面の電位分布の可視化技術を開発した(特許出願済)。また、pHと塩化物イオン濃度を可視化する蛍光イメージング手法に関しては、使用する試薬類の混合・添加条件を最適化することで、検出感度を約1桁高めることに成功した(特許出願済)。 パーライト鋼に強加工を施し、フェライト/セメンタイトのラメラー間隔を非常に微細にしたパーライト組織を作り、その耐孔食性を塩化物水溶液中で評価した。その結果、セメンタイトは孔食萌芽の成長に対してバリヤーとして機能する可能性が高いことが分かった。セメンタイトの高い耐食性は、表面に炭素および鉄酸化物の皮膜が生成するためであることを見いだした。 さらに、孔食萌芽の成長を停止させるための条件として、鋼表面の液性制御に関する研究を行った。鋼中に窒化物を微量添加すると、腐食環境でアンモニアが鋼材表面に生成し、pHがアルカリ化することで効果的に孔食などの局部腐食を防止できる可能性があることが分かった(特許出願済)。また、鋼中の固溶炭素濃度を増加させると、孔食発生に対する耐食性が向上することを見いだした。そして、この原因が、炭素により鋼の活性溶解の速度が低下することに起因していることを解明した。さらに、固溶炭素の増加により、MnSなどの非金属介在物を起点とする孔食も効果的に抑制できることも見いだした。また、固溶炭素を利用した具体的な耐食性向上方法として、1)プラズマ浸炭によるステンレス鋼の表面高耐食化と、2)高耐食炭素鋼のための短時間焼戻し技術を考案し、実験により、その効果を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究室の大学院生(博士・修士)に研究に参画してもらい、新規腐食計測技術の開発チームと、材料高耐食化技術の開発チームに分けて、研究を実施できていることが順調に進展している最大の理由であると思われる。また、窒化物と固溶炭素が耐食性向上に機能することを早期に見いだすことができた点は幸運であったと思う。緻密な文献調査の実施と他機関の研究者との連携の効果であると思う。
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Strategy for Future Research Activity |
1.表面微細粒化による孔食萌芽死滅技術の開発と高耐食化機構の解明: ショットピーニングや摩擦摺動などで鋼表面を微細粒化するなどの表面改質を試みて、孔食起点の成長停止・死滅条件を解析する。申請者らが開発したin situ観察機能付きマイクロ電気システムを用い、本当に材料表面の特定の金属組織学的要因が孔食(ピット)の停止につながるのか否かを検証することも試みる。析出物や粒界などマイクロからナノのレベルでの電気化学計測が必要なため、電極サイズを1マイクロメートル四方程度まで極微小化することを試みる。 2.高耐食化指針の導出と検証: 以上の研究を通し、鉄鋼材料が本来有する再不働態化能力を極限まで引き出すことが可能な金属組織設計指針を導出する。最終的には、孔食電位計測、塩水噴霧試験、促進大気曝露試験などにより屋外環境などで耐孔食性向上の程度を検証することも試みたい。
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Research Products
(36 results)