2017 Fiscal Year Annual Research Report
電場中での表面プロトニクスが拓く新規低温触媒プロセスの学理と応用
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17H01344
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
関根 泰 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20302771)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 表面プロトニクス / 電場触媒反応 / 交流インピーダンス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
メタン水蒸気改質は大きな吸熱を伴う反応であり,水素の高収率化のためには熱力学・反応速度論の両観点から高温(> 973 K)が必要となる.昨年までの成果から,触媒層へ直流電流・電圧を印加し,反応場へ電場を印加すると著しい低温で反応が進むことを見出した.電場印加中におけるPd/CeO2触媒表面の吸着種を観測するため,原料のメタンと水を供給しながらin-situ IR測定を実施した.その結果,低温(473 K)で電場印加時にのみ855 cm-1に水回転スペクトルが検出された.このスペクトルは,触媒表面へ吸着した水が回転運動を伴いながら隣接した水酸基へプロトンを輸送する「表面プロトニクス」が発現していることを示している.そこで,電場印加中に発現していると考えられる吸着水由来の表面プロトニクスを交流インピーダンス法によって抽出し,表面伝導特性を評価した. 交流インピーダンス測定によって得られたナイキストプロットから,低温域(473 K)および高温域(673 K)で得られた両方のナイキストプロットについて,dry雰囲気からwet雰囲気に切り替えると円弧が小さくなり抵抗が小さくなることが分かった.各温度におけるそれらのパラメータを固定し,wet雰囲気の測定で得られたナイキストプロットのフィッティングから,CeO2内部の伝導率は,典型的なアレニウス型の温度依存性を示すのに対して,CeO2表面の伝導率は,低温になるにつれて伝導率が上昇するという特異な挙動を示した.これは,低温にて水の吸着が有利となるため吸着水が増え,キャリアとなるプロトン量が増大したためと考えられる.このように,交流インピーダンス法を用いてCeO2に吸着した水由来の表面プロトニクスを抽出・評価が可能であり,吸着水が表面プロトニクスの発現に重要な役割を担っていることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
表面プロトニクスを交流インピーダンス法によって抽出可能であることを世界で初めて定量的に示すことが出来た。これは、本科研費でのノルウェー・オスロ大のNorby教授とのコラボレーションの結果である。早稲田大学の博士学生がノルウェーに長期滞在し、共通の装置を導入して、密な議論を行いながら、共同で評価法を確立した。また、その成果として、共著での論文も執筆・出版できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も、ノルウェー・オスロ大とのコラボレーションをさらに深め、表面プロトニクスが創り出す不均一系触媒反応について、より深い研究を行っていく。In-situ/operando解析手法を確立し、活きたままの触媒を電場中で解析することにより、従来になかった新たな触媒反応メカニズムを、より深く解析し体系的な学理を確立することが出来る。
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