2018 Fiscal Year Annual Research Report
電場中での表面プロトニクスが拓く新規低温触媒プロセスの学理と応用
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17H01344
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
関根 泰 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20302771)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電場触媒反応 / 表面プロトニクス / 水素製造 / メタン転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
メタン水蒸気改質は水素を製造するための重要なプロセスである。表面プロトニクスを半導体担体触媒に適用した場合、メタン水蒸気改質が非常に低い温度で進むことを見出してきた。昨年までの反応機構の解析により、電場により担体表面をプロトンが伝導し(表面プロトニクス)、伝導したプロトンと担持金属上に吸着したメタンが衝突することで反応を促進することが分かった。CH4のC-H結合の活性化を担うのは活性点である金属原子であり、様々な系において合金触媒が反応性、選択性、安定性など様々な面において優位性を示す報告が多い。そこでPd-Zn合金を用い、Ligand効果やEnsemble効果といった合金の効果が電場中活性に与える影響について検討した。結果、律速段階であるCH4の活性化過程は、SR(加熱)ではPd表面で起こり、ER(電場印加)ではPd担体の界面で起こるため、合金化の影響は全く異なり、ZnがPdの活性を向上させるのは電場中のみであることが分かった。XRDおよびEXAFSにより担持金属の構造を、DRIFTS測定によりPd電子状態を検討した結果、Zn添加量が増える程Znからの電子遷移によりPdは電子リッチになり(Ligand効果)、Pd-Pdアンサンブルは減少した(Ensemble効果)。SRではCH4の活性化にはまとまったPdアンサンブルが必要であり、Zn添加によりPd-Pdアンサンブルが減少することで、SR活性が減少した。一方、ERでは、Znに囲まれたPd原子は電場中ではCH4を活性化することが可能であり、Pd-Pdアンサンブルの減少はER活性の低下を起こさず、むしろ、Ligand効果により活性が向上した。これにより、一般的に知られる第二金属の添加における“合金触媒のジレンマ”は、電場という特殊な反応場を用いる事で解決可能になる、という新たなコンセプトを提案できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
金属間化合物における触媒作用での新しい発見は、電場を印加した場合にのみ現れる新しい現象である。これにより、各種化学反応に対して、金属間化合物を適用した新たな触媒作用を活かしうることを見出し、大きな進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
通常の熱による触媒反応においては、炭素析出による触媒劣化の他、シンタリングや硫黄被毒による触媒劣化も問題となるが、電場中においてこれらの観点から触媒安定性を評価した研究は今までに報告がない。電場中での表面プロトニクスによる触媒反応では、Ni触媒に第二金属を添加する事により炭素析出を抑えつつ活性を向上させる事が可能になることが期待される。よって電場中における触媒耐久性に関する検討を行うとともに、外部電場印加のエネルギー削減に向けた担体構造の制御も併せて進める。これらの研究は、電場触媒反応の実証化を視野に入れた次なる段階を考えたとき必要不可欠な研究であると同時に、電場を用いたその他の反応系にも展開可能になる。
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