2018 Fiscal Year Annual Research Report
下水汚泥から直接水素を生成する方法の開発とその反応メカニズムの解明
Project/Area Number |
17H01359
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加納 純也 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40271978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村松 淳司 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40210059)
石原 真吾 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40760301)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水素 / 下水汚泥 / 再生可能エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
下水汚泥に触媒とガス化剤を混合して、それを水蒸気雰囲気下で加熱することにより水素を製造する方法において、1)触媒の選択と混合量の低減、2)均一混合を可能にする混合方法の選択、3)水分の添加量ならびに加熱温度の影響、4)試薬を用いた水素変換反応メカニズムの検討 の4項目に関して検討を行った。 1)に関しては、銅、鉄、アルミニウム、マグネシウムなども下水汚泥からの水素生成の触媒として添加したが、ニッケルほどの効果は見られず、実験を行った中では、ニッケルを使用した場合、最も水素生成量が多くなった。そのニッケルの混合量を下水汚泥中の炭素に対して、1、0.1、0モルと変化させたところ、ニッケルを1とした場合に比べ、0.1では水素の生成量が約半分であり、0の場合では、約10分の1まで水素の生成量が減少することが分かった。 2)に関しては、下水汚泥を模したセルロースと触媒を模したガラスビーズの高速剪断式のシミュレーションを行った。高速剪断式では、セルロースが団子状になり、それにガラスビーズがコーティングされる状態となり、均一混合するためには、さらに別の機械式撹拌翼をつける必要があることが分かった。容器回転式では、単に団子状になるだけであり、混合は進んでいかなかった。 3)に関しては、反応場へ水分を添加をすると、しない場合に比べ、水素の生成量は格段に増加する。水分の添加量を増加させると、ある水分量までは水素生成量が増加するがそれ以降は一定の値になった。また、加熱温度に関しては、300℃ではほとんど水素は生成することはなく、それ以上では加熱温度が高くなるにつれて、水素生成量も増加することが分かった。 4)に関しては、水分を添加すると水素の生成量が増加することから、水分が反応に関係していると考えられ、現在の段階では、下水汚泥が一度炭化し、炭化したものと水分が反応し、水素が生成しているものと推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の計画においては、下水汚泥からの水素の生成に関して、1)触媒の選択と混合量の低減、2)均一混合を可能する混合方法の選択、3)水分の添加量ならびに加熱温度の影響、4)試薬を用いた水素変換反応メカニズムの検討、の検討を行った。 1)に関しては、使用した試薬の中ではニッケルを使用した場合に最も水素生成量が多くなった。そのニッケルの混合量を下水汚泥中の炭素に対して、1、0.1、0モルと変化させたところ、ニッケルを1とした場合に比べ、0.1では水素の生成量が約半分であり、0の場合では、約10分の1まで水素の生成量が減少することが分かった。ニッケルが水素生成コストの約6割を占めるため、ニッケルの量を極力減らし、水素の生成を最大にする量を見いだすことが必要であることが分かった。 2)に関しては、下水汚泥を模したセルロースと触媒を模したガラスビーズで、高速剪断式のシミュレーションを行った。高速剪断式では、セルロースが団子状になり、それにガラスビーズがコーティングされる状態となり、均一混合するためには、さらに別の機械式撹拌翼をつける必要があることが分かった。 3)に関しては、水の添加量を調整して水素生成量を最大にし、加熱温度はできるだけ低下させ、投入するエネルギーを低減させることが必要であることが分かった。 4)に関しては、水分を添加すると水素の生成量が増加することから、水分が反応に関係していると考えられ、現在の段階では、下水汚泥が一度炭化し、炭化したものと水分が反応し、水素が生成しているものと推定される。 以上のことから、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
1)シミュレーションによって選択した混合方法による下水汚泥との混合とその評価:2年度目で選択した混合方式による混合装置を購入し、実際に下水汚泥を用いてガス化剤と触媒との混合を行う。その評価としては蛍光X線分析(多元研共通機器)によって行う。混合した試料を水素の生成に用い、混合度合いと水素生成量の関係を明確にする。均一混合が進めば、水素の生成量が多くなるものと推察されるので、より均一になる混合条件を見いだす。均一混合が進まない場合には、再度粉体混合シミュレーションを行い、均一混合を可能にするパラメータを見いだし、それを制御してより均一な混合を図る。 2)固体残渣からの触媒の回収あるいは固体残渣のガス化剤ならびに触媒としての再利用:ニッケル以外の触媒を探索したが、ニッケル以上に水素を生成する触媒が見つからなかったため、ニッケルの回収ならびに再利用の可能性を検討する。固体残渣中では金属ニッケルになっていると考えられるので、磁力選別を適用し、金属ニッケルの回収を検討する。固体残渣に含まれるニッケルは、再度、触媒として機能する可能性があるので、固体残渣を触媒として再利用することを検討する。さらには、再利用と回収を組み合わせ、さらなる投入原料の削減を図り、水素製造コストの削減を図る。 3)重水を用いた反応メカニズムの検討:本提案では、下水汚泥にガス化剤と触媒を混合した後に、水蒸気雰囲気下で加熱するという極めて簡単なプロセスで水素を製造できるが、水蒸気雰囲気下にすると水素の生成量が2倍程度になることが予備的試験から明確になっている。下水汚泥にも混合するガス化剤や触媒の組成にも水素源が含まれているものの、水素ガスの起源が明確になっていない。そこで、重水素を滴下して重水蒸気雰囲気にし、どれほどの水素ガスが滴下した重水素から生成されたものかを明確にし、反応メカニズムの解明につなげる。
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Research Products
(5 results)