2017 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding of profile diversity and circulation of fuel particles in fusion plasmas
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17H01368
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
山田 弘司 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (20200735)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / 水素同位体 / 輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は制御熱核融合において燃料となる水素同位体、灰であるヘリウムおよび不純物の混合がもたらす粒子分布の多様性の起源を理解すること、それをもとに燃焼率の最大化を指標として燃料循環の最適化シナリオを提案することを目的としている。初年度の平成29年度は研究連携者と共に研究の基盤となる実験プラットフォームの整備を進めた。基幹機器は水素同位体をプラズマに注入する固体水素ペレット入射装置、プラズマ中のイオン種別密度を計測する荷電交換分光、密度揺動の長距離相関分布を計測するドップラー反射計の3つである。ペレット入射装置は既存設備を調整し、軽水素および重水素を個別に入射できる運転手法を確立した。これにより、プラズマ燃料供給効率に関する初期実験を核融合科学研究所で稼働中の大型ヘリカル装置(LHD)において実施できた。荷電交換分光法では新規の高性能CCD検出器の動作確認を行った。さらに、上記のペレット入射初期実験において、この計測法によって水素・重水素別の密度を全空間ではないが得られることを検証することができた。ドップラー反射計ではマイクロ波周波数コムを用いた開発を進めた。この計測のデータ解析方法の高度化を図るプログラム開発を行い、ペレット入射に伴うLHDプラズマ中の電場振動現象を観測することができた。さらに、長距離トロイダル相関を調べるための新型計測器開発において、わずかに周波数をずらした2台の周波数コムを用いることにより、より多数の空間点を観測できるシステム設計の指針が得られた。以上のこれらの研究実績に関する発表を国内学会、国際会議で行った。また、これらの実験研究の整備とともに、水素燃料同位体の比率が核融合燃焼およトリチウム増殖比に与える影響を調べるため、燃料循環をシステムダイナミクスとして解くモデルの検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年計画のうち初年度に当たる平成29年度においては研究基盤となる実験プラットフォームの整備に注力した。研究実績の概要にあるように、基幹となる固体水素ペレット入射装置、荷電交換分光、ドップラー反射計の3つの機器の整備が順調に進み、その動作検証を行うことができた。既に、固体水素ペレット入射については重水素と軽水素の個別入射制御、荷電交換分光においては主イオンである重水素と軽水素イオン密度の分離測定、ドップラー反射計においては多数空間点観測を可能とする周波数コム帯域拡大の効果検証まで進捗した。特に、ヘリウムと水素の荷電交換光が計測できる2波長分光器の高度化のためCCD検出器の動作検証が進んだこと、また、長距離トロイダル相関を調べるための新型計測器開発において、わずかに周波数をずらした2台の周波数コムを用いることにより中間周波数帯を従来の20GHzから500MHzまで低減できることを確認し、より多数の空間点を観測できるシステム設計の指針が得られたことは今後の展開を明るくしている。粒子輸送への同位体効果を調べる実験を固体水素ペレット入射を用いて初期的ではあれ、実施できたことも大きい。これらはLHDをプラットフォームとした実験研究の遂行については当初の計画通りである。また、国際協力についてもドイツ・マックスプランクプラズマ物理研究所と進めており、実際LHDでの初期実験は協力して行った。一方、相互比較となるドイツ・W7-X実験では重水素実験開始が2021年以降の開始となったことから、本研究課題交付期間内の水素・重水素比較実験は望めなくなった。補完として、水素とヘリウムの比較検討を進めることとした。主体となるLHD実験に関わる部分は当初の計画以上に進んでいるが、本研究課題の遂行・達成には付加的な部分ではあれ、国際共同実験がやや後退する見込みから、総合的に(2)と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更はない。平成29年度の実績により、平成30年度において本研究課題の目的に適う実験研究基盤の整備完了を見通すことができている。平成30年10月から翌年2月にかけて行われるLHDプラズマ実験前に、(1)ペレット入射装置については計画を満足できる状況まで達成できているので、固体水素溶発過程の高速計測を可能とする準備を行うこと、(2)荷電交換分光では、明るい集光系を持ちながら収差が極めて小さいレンズ分光器を採用するとともに、既存の分光器に比べより高い波長分解能を得るために、グリズムと呼ばれる高い波長分散性能をもつ分光素子を使用して高度化すること、(3)ドップラー反射計では空間8点の同時計測が可能なシステムを各種部品の特性試験を実施して組合せ、システムとして完成させテストベンチで検証すること、を進める。そして、これらのシステムをLHDプラズマ実験において同時稼働させ、総合的な実験研究に着手する。固体水素ペレット入射によって水素と重水素の注入量を正確に制御し、その際の固体水素の溶発、イオン密度分布の変化、その際の輸送特性および揺動あるいは非局所的な輸送の観測・同定を進める。獲得した実験データを元にして、理論に関する検討(ジャイロ運動論シミュレーションおよび統合モデル化)を連携研究者と議論を進め、交付期間中に達成可能な範囲とマイルストーンを確認する。国際共同研究としては、平成30年7月から10月に実施されるドイツ・W7-X実験に参画し、水素とヘリウムの輸送特性の異同についての研究を共同で行う。また、将来の核融合炉における燃料循環における燃料水素同位体比制御の影響に注目したシステムダイナミクスの解析を進める。
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Research Products
(9 results)