2018 Fiscal Year Annual Research Report
相同組換えにおけるクロマチンでの相同鎖検索機構とその制御メカニズムの解明
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17H01408
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
胡桃坂 仁志 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (80300870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 光弘 明星大学, 理工学部, 教授 (80231364)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ゲノム維持修復 / ゲノム多様性 / ゲノム進化・再編 / 遺伝情報複製・再編 / ゲノム機能 / 染色体構築・機能・分配 / 生体高分子構造・機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、クロマチン構造を形成したDNA上での相同組換え反応の解明を目指して、特に相同鎖検索機構の過程を中心に研究を推進している。ゲノムDNAの二重鎖切断損傷の修復や減数分裂期の遺伝的組換えにおいて、相同組換えは必須の機構である。RAD52は、ゲノムの損傷領域において単鎖DNAと複合体を形成する。本年度は、相同組換え反応に重要なRAD52と単鎖DNAとの複合体のX線結晶構造解析を行い、立体構造の解明に成功した。そして、RAD52と単鎖DNAとの複合体には、2種類のDNA結合様式が存在することを立体構造レベルで明らかにし、相同組換え反応の際の相同鎖検索機構の1つである、単鎖DNA間でのアニーリング反応のメカニズムのモデルを提唱した。また、RAD51およびDMC1による相同的対合反応の解析をさらに推し進めるために、遺伝学的解析が容易であり、かつ安定なタンパク質を精製することができる、シロイヌナズナのRAD51およびDMC1を精製し、それらの活性について、試験管内相同組換え系によって解析を行った。また、比較対象として、ヒトおよびイネのRAD51およびDMC1の精製も行い、シロイヌナズナのRAD51およびDMC1の相同組換え活性との比較研究を行った。その結果、シロイヌナズナのDMC1およびRAD51の相同的対合活性は、植物間で非常に近接しており、ヒトのRAD51およびDMC1とは、その活性の強度において異なっていることが明らかになった。これらのサンプルは、RAD51およびDMC1とヌクレオソームとの複合体の立体構造解析の試料として有用であり、現在行っている、RAD51-ヌクレオソーム複合体のクライオ電子顕微鏡解析に使用する予定である。また、ヒトRAD51-単鎖DNA-ヌクレオソーム複合体の調製方法の確立に成功し、現在、クライオ電子顕微鏡によって初期データの取得を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、生化学的および構造生物学的手法を中心に、クロマチン上での相同組換え機構の解明を目指している。本年度は、相同組換えの中心の反応である相同的対合反応を担うRAD51およびDMC1に加えて、相同的対合反応を直接もしくは間接的に触媒するRAD52に着目して研究を進めた。そして、RAD52と単鎖DNAとの複合体のX線結晶構造解析による立体構造解析に成功し、2種類のDNA結合領域において単鎖DNAが結合した複合体の立体構造情報を得た。それらの解析を通して、相同組換え反応の際に起こる単鎖DNA間でのアニーリングの反応モデルを提案することができた。この成果は、当初の計画を大きく上回るものであった。また、RAD51およびDMC1による相同的対合反応の解析対象を、遺伝学的解析が容易なシロイヌナズナまで広げ、シロイヌナズナのRAD51およびDMC1を精製する系を確立した。これらの研究成果は、2報の学術論文として報告した。これらのことから、本年度の研究は当初の計画以上に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヌクレオソーム上におけるRAD51およびRAD52による相同鎖検索機構を、立体構造レベルで明らかにするために、RAD51-単鎖DNA-ヌクレオソーム複合体およびRAD52-ヌクレオソーム複合体の立体構造解析を、クライオ電子顕微鏡解析を中心に推進する。それによって、これまでボトルネックとなっていた結晶化を回避し、立体構造情報が得られると考えられる。クライオ電子顕微鏡による解析は、東京大学に導入されたTitan Krios(300kV)およびTalos Arctica(200kV)の装置を中心に用いることで推進する。並行して、RAD51-単鎖DNA-ヌクレオソーム複合体およびRAD52-ヌクレオソーム複合体の結晶化についても、結晶化ロボットを用いた大規模スクリーニングを行なう。良質な単結晶が得られた場合は、大型放射光施設SPring-8またはPhoton Factoryにて回折実験を行い、データセットを取得する。そして、RAD51-単鎖DNA-ヌクレオソーム複合体およびRAD52-ヌクレオソーム複合体の立体構造を明らかにすることで、ヌクレオソーム上での相同鎖検索機構を明らかにする。
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Research Products
(17 results)