2017 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of DNA replication by G-quadruplex and its binding proteins
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17H01418
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
正井 久雄 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 所長 (40229349)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 複製タイミング / クロマチンループ / 染色体高次構造 / 非相同末端結合 / 組換え修復 / ES細胞 / グアニン4重鎖DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
Rif1は、進化的に保存されており、酵母とヒトにおいて複製タイミングの制御に必須な役割をはたす。精製されたRif1はG4構造に特異的に結合する。Rif1は、C端領域に依存してG4に特異的に結合するとともに、多量体を形成する。また同時に複数のDNAに結合しクロマチンループ構造を形成する可能性がある。 本年、マウスRif1の生化学的解析から、N端Heat repeatおよびC端ドメインの両者がG4に結合し、多量体形成能を有することを見出し、これがクロマチン高次構造を形成するモデルを提案した。またRif1の点変異株の解析から、C端変異によりRif1の核膜局在が喪失し、複製タイミングが脱制御することを見出した。これらの結果から、Rif1はC端を介して核膜近傍で染色体上G4構造に結合し、さらに多量体形成能により、複製タイミングを制御するクロマチンドメインを形成する可能性が示唆された。 Rif1は転写制御にも関与し、ES細胞でRif1をノックダウンすると、Zscan4遺伝子領域など一群の遺伝子の転写が脱制御される。Rif1による転写抑制には比較的短い制御領域(2.6kb)で十分であり、エピゲノム制御の関与が明らかになりつつある。Rif1は二重鎖DNA切断に応答する非相同末端結合修復に関与することが明らかになっており、G4結合とクロマチン制御が、共通のメカニズムで複製タイミングのみでなく、転写制御や二重鎖DNA切断応答にも関与するかどうかは今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年、超高解像度顕微鏡 PALM を用いた1ヌクレオソームトラッキングの解析から、核膜近傍のクロマチンが弛緩し動きが活発になることがわかった(遺伝研前島博士との共同研究)。このことは、Rif1が核膜近傍でG4結合を介して、中/後期複製を規定するクロマチンドメインを形成する可能性を強く示唆する。Rif1の核膜局在の機構は不明であるが、NLSを除去したRif1-mKO2のタイムラプス解析から、M期脱出直後にRif1はERと局在する多数のfociを形成する。一方NLS存在下では同じタイミングで核内にfociを形成する。このことは、Rif1は細胞内小器官の膜構造に細胞周期依存的に連結される可能性を示す。さらにCRISPR-Cas9によりC端変異体を作製した結果、C末端24アミノ酸のtruncationにより、核膜から遊離し、しかもこの変異株では複製タイミングのゲノムワイド変化が誘導された(理研・平谷博士との共同研究)。タイミングの変化はゲノム領域特異的に観察され、Rif1の核膜局在が、中/後期複製タイミングの特異的ドメインを規定する可能性が示唆された。さらに、同じ変異体において、DNA損傷修復fociの減少も観察された。Rif1によるG4を介した核膜近傍でのクロマチンドメイン制御による、より包括的なクロマチン動態制御の可能性が示唆された。また、これまでに精製した、マウスRif1タンパク質の各種変異体、部分ポリペプチドの構造を電子顕微鏡で観察し、C末領域とN端HEAT Repeatsの形状について予備的な結果を得た。C端を介した核膜への局在のメカニズムを解明する予定であり、リン脂質修飾などの可能性を検証してきたが、まだ結論をだせていない。また、Rif1の部分ドメインや全長タンパクのCryEMによる解析を進める予定であったが、十分な量のタンパクを準備できないなどの理由でやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
・作製したRif1C末の各種変異体細胞株を用いて、C末領域による核膜連結の喪失が、複製、転写、修復に及ぼす影響を詳細に解析する。 ・ミシガン大学のHuilin Li博士と共同で、Cryo電顕でのマウスあるいは分裂酵母のRif1タンパク質の構造解析を行う。特にRif1との複合体の構造を解析する。 ・Rif1タンパク質がC端領域を介して、核膜に局在するメカニズムを解明する。パルミトイ化酵素の網羅的解析を行う。 ・分裂酵母において、多量体形成が特異的に欠損した変異体を単離し、多量体形成が複製タイミング制御に重要かどうかを決定する。 ・構造生物学的知見、動物と細胞における各種変異体の機能解析、生化学的知見に基づき、Rif1による複製タイミング、転写脱抑制、DSB細胞応答過程制御の分子、構造基盤を解明する。
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Research Products
(21 results)