2018 Fiscal Year Annual Research Report
系統的破壊を通じた巨大有糸分裂装置・スピンドルの分子モデル構築
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17H01431
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
五島 剛太 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (20447840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清光 智美 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (10503443)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、遺伝情報を姉妹細胞へ継承するのに必須の細胞分裂装置・スピンドル総体の分子モデルを構築することを目標に定めた。近年、多くのスピンドル形成因子が報告され、またスピンドル形成の各過程には複数の機構が存在することも示されたが、遺伝子解析法の不完全さにより相矛盾する報告も多く、分子モデルの構築には至っていない。本研究では、ロバストな遺伝子破壊法を用い、スピンドル形成因子候補の役割を逐一詳細に突き止めることを目的とした。 ヒメツリガネゴケを用いた実験では植物細胞の分裂に関して新しい知見を二つ得た。動原体タンパク質の欠損では、細胞質分裂の異常が高頻度で検出された(Kozgunova and Goshima. 2019)。また、微小管脱重合型キネシン13モータータンパク質を完全に欠失させた細胞では、動物細胞でのこれまでの知見とは異なり、機能的なスピンドルは形成され、その長さは野生株にくらべて短かった。タンパク質の生化学活性を調べたところ、動物のものとは異なり脱重合活性は認められなかった。植物スピンドルと動物スピンドルの動態制御機構の違いが明らかになった(Leong et al. 2020)。一方、動物細胞を用いた実験では、植物ホルモン・オーキシン依存的な急速タンパク質分解系を用いて、スピンドル微小管形成に重要とされてきた一群の因子の欠損表現型解析を進め、染色体因子による動原体微小管安定化因子の制御様式について新しい知見を得た(Tsuchiya et al. 2019 (preprint))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ショウジョウバエ細胞およびヒメツリガネゴケ細胞でキネシンモータータンパク質を欠失させた実験において、予想外の細胞分裂異常が出て予定外の追加遺伝子改変実験、細胞観察を行ったため遅れは生じたが、最終的にこのプロジェクトを含めた複数の原著論文を公表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
動物培養細胞、植物細胞(ヒメツリガネゴケ原糸体幹細胞)、酵母細胞を用いた遺伝子機能阻害プロジェクトを継続する。CRISPR/Cas9法や相同組み換えを用いた特定の遺伝子の完全破壊と、RNA干渉、植物ホルモン・オーキシン依存的なタンパク質分解系を用いた別の遺伝子産物の迅速な分解を組み合わせることで、系統的な遺伝子機能阻害を行う。特に着目したいのは、染色体とスピンドル極との関係である。スピンドル微小管の束化因子が染色体上のシグナル伝達分子の制御下にあるのではないかとの仮説の検証を進める予定である。
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Remarks |
第15回(平成30年度)日本学術振興会賞受賞:五島剛太(2019年2月)
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