2017 Fiscal Year Annual Research Report
コムギいもち病菌の強病原化・パンデミック化機構の解明と持続的抵抗性遺伝子の同定
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17H01462
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
土佐 幸雄 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20172158)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | いもち病 / コムギ |
Outline of Annual Research Achievements |
コムギいもち病菌の強病原化のメカニズムを解明するため、ブラジルにおける発生直後の菌株Br48にメンデル遺伝学的に見出された弱い非病原力遺伝子A2のクローニングを試みたが、作用が微弱なゆえに微妙な病原性判定が難しく、座乗領域をクローニング可能なサイズまで絞り込むことが出来なかった。もうひとつの仮説、「Br48の非病原力遺伝子PWT3は、塩基置換のために抵抗性遺伝子産物との結合が完全ではないながらも、ある程度抵抗性遺伝子に認識される。これが完全破壊されれば強病原性となる。」を検討するため、Br48のPWT3を破壊し、コムギ第1葉に接種したが、病原性の増強を検知することは出来なかった。そこで、Br48等発生直後の菌と現在広がっている強病原性株との直接的比較が必要であると考え、バングラデシュからコムギいもち病菌10菌株を入手した。 一方、新規コムギいもち病抵抗性遺伝子を同定するため、世界中から集めた普通系コムギ520系統をスクリーニングしたところ、18の抵抗性系統を見出した。これらのうち17系統の抵抗性は既知の遺伝子Rmg8に支配されていた。一方、残る1系統GR119は、2つの抵抗性遺伝子を保有していた。ひとつはRmg8であったが、もうひとつは新規遺伝子であった。この遺伝子を、暫定的にRmgGR119と命名した。GR119の強度抵抗性は、Rmg8とRmgGR119の相加的作用によるものであった。 さらに、オオムギのコムギいもち病抵抗性遺伝子Rmo2.dのクローニングを目指して精密マッピングを行ったところ、候補遺伝子を1遺伝子に絞り込むことができた。コムギいもち病菌に抵抗性の品種Golden Promiseの本遺伝子をサイレンシングしたところ、感受性となった。また、Rmo2.dに認識されるBr48の非病原力遺伝子のクローニングにほぼ成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コムギいもち病菌の強病原化のメカニズムについては、当初計画していた方法による証明はできなかった。そこで、別のアプローチをすべく、強病原力菌株を農林水産大臣許可を得て入手したところである。 一方、新規コムギいもち病抵抗性遺伝子の探索ならびに同定は予想を上回るペースで進んでいる。520品種のスクリーニングの結果、新規抵抗性遺伝子をひとつ見出すことが出来た。また、オオムギのコムギいもち病抵抗性遺伝子のクローニング、それに対する非病原力遺伝子のクローニングにほぼ成功した。 総じて見れば、順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
コムギいもち病菌の強病原化のメカニズムについては、従来菌と強病原力菌について、トランスクリプトームの網羅的比較解析を行う。 抵抗性遺伝子については、RmgGR119の分子マッピングを行って、育種に使える分子マーカーを作成するとともに、Rmg8, RmgGR119のクローニングを試みる。 また、コムギ近縁野生種ならびにオオムギ品種にいくつか抵抗性系統を見出しているので、それらの抵抗性遺伝子の同定を行う。 Rmo2.dについては、今候補としている遺伝子が求める遺伝子であることを機能相補により証明するとともに、その育種への利用方法について検討する。
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