2018 Fiscal Year Annual Research Report
細胞や生体の恒常性維持に必要な生理的小胞体ストレス応答機構の解明
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17H01468
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河野 憲二 奈良先端科学技術大学院大学, 研究推進機構, 特任教授 (50142005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
都留 秋雄 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (80273861)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / 糖尿病 / プロインスリン / 翻訳休止 / 特殊スプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)膵島β細胞におけるIRE1及びATF6経路活性化の生理的役割 ATF6α単独のKOマウスは、野生型と比べて差は認められないが、そのマウスにIre1α(ΔR/ΔR)の形質を導入すると、生後8週齢ですでに顕著な糖尿病症状を示すことがわかった。この表現型はIre1α(ΔR/ΔR)マウスが示すよりもより顕著な症状であった。DKOマウスでは膵島が顕著に萎縮しており、膵島を単離して調べることは困難であった。そこで今までに作製したMIN6(Ire1αΔR/ΔR, Atf6α+/+)細胞に、ATF6αの特異的阻害剤CeapinA7を処理し、増殖と生存率、インスリン分泌などについて調べた。その結果、インスリン分泌においてはIre1α遺伝子が大きく関与しているが、さらにAtf6αのKOが加わると、細胞増殖・細胞周期に大きな影響がでて、インスリン分泌よりも細胞の生存にとって必須な因子が影響を受けている可能性が高いことが明らかとなった。 (2)翻訳ポージングと連動した新規SRP経路の解析と小胞体ストレス応答 小胞体ストレス応答に重要な役割を担うXBP1uタンパク質は、C末端側で翻訳ポージングを起こすことを明らかにした。リボソームプロファイリングによりMet(260)がPTCでポージングを起こしていることも明らかとなった。今年度は、XBP1uのC末側のアミノ酸とリボソームトンネル内の因子の相互作用が翻訳ポージングに大きな影響を起こすことを光架橋実験と変異遺伝子を用いることにより解析した。その結果、リボソームトンネル狭窄部位を形成するuL4タンパク質との相互作用がポージングに重要であること、さらに71番目のArgとXBp1uがダイレクトに相互作用しているという結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)MIN6(Ire1αΔR/ΔR, Atf6α+/+)細胞にCeapinA7を処理をすると細胞の増殖と生存率が顕著に落ちることが判明した。MIN6(Ire1αfl/fl, Atf6α-/-)細胞にAd-Creを感染させIre1α遺伝子をKOした細胞を単離しようとしたが、選択して残ってくる細胞は、KOされていない細胞のみ増えてきた。これらの結果を総合して考えると、膵島β細胞では両遺伝子をKOすると細胞死を起こすか、細胞の増殖停止を起こすことが予想された。(2)今までの解析からリボソームトンネルの狭窄部位を形成するuL4のArg71がXBP1uと相互作用する可能性があったので、細胞にuL4(Arg71)のアミノ酸をLys, Trp, Ala, Gly, Gluに置換した変異型uL4を細胞に発現し、ポージングが変化するかどうを調べたところ、Lysのみポージングを起こし、その他のアミノ酸は全てポージング作用を失った。この結果は、XBP1uはリボソームのuL4と相互作用し、特に71番目のArgとの相互作用がポージングに重要であることが示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果から、膵島β細胞の増殖にとり、ATF6aとIRE1a遺伝子は非常に重要な役割をしている可能性が示唆され、またXBP1uのポージングにuL4(Arg71)が大きく関わっている可能性が示された。最終年度はこれらの結果をもっと明確に示すことを目指して研究を進める。
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