2019 Fiscal Year Annual Research Report
Inter-annual changes in zooplankton community in the Bering Sea shelf: Based on imaging analysis
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17H01483
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 篤 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (50344495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松野 孝平 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (90712159)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 動物プランクトン / 画像イメージング技術 / ネット目合い / 4連ノルパックネット / 開口比 / 濾過効率 / 採集効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は南東部ベーリング海陸棚域での動物プランクトン定量採集に用いた、北太平洋標準プランクトンネット(NORPAC net)の目合いの違いによる採集効率を評価するために4連ノルパックネット(Quad NORPAC net)を開発し、4つの異なる目合い:63, 100, 150, 335 umを装着した4連ノルパックネットによる採集物について、ZooScanによる画像解析を行った。 ネットの濾過効率はネット開口比と密接に関係しており、十分な濾過効率を確保するにはネット開口比を3以上にする必要があるとされている。本研究で用いた各目合いの開口比は目合い150 umと335 umでは3以上であるが、目合い63 umと100 umではこれよりも低かった。濾過効率は目合い63 umで低く、濾過効率が低下するような要因(目詰まり等)があったことを示していた。 各目合いの採集効率は目合い150 umが最も高く、63、100 umが同程度で、335 umが一貫して少なかった。これは開口比が目合い150 umで最も高いことと併せて考えると整合的であった。 各目合い間の出現個体数に有意差の見られた分類群の体サイズはいずれも400 um前後であった。ネットの網目選択について、対象生物の断面最大径が網目の対角線長より小さいとき、網目逸出が生じるとことが知られている。目合い335 umの対角線は474 umであり、これより小さい各分類群は同目合いでは定量採集されなかったと考えられる。濾過効率と採集効率の観点から、4つの目合いのプランクトンネットのうち、いずれも良好なパフォーマンスを示した目合い150 umが定量採集に相応しいと考えられた。 今年度は上記内容を学術論文にて発表した。本研究により開発された4連ノルパックネットは早速、海洋研究開発機構など他の研究機関においても使用されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要テーマである1955年~2013年の59年間にわたり夏季の南東部ベーリング海陸棚域にて採集された動物プランクトンのホルマリン液浸試料に対する画像イメージング解析も順調に進み、上記期間に4回あった気候レジームシフトを挟む連続2年の計8年において、同じ南北観測ライン (165Wおよび166W線) で採集された動物プランクトン試料についてZooScan測定を行い、その結果について共分散構造解析も行っている。 南東部ベーリング海陸棚域の周辺海域であるアリューシャン列島ウニマック水道では、夏季に海鳥や鯨類が摂餌を行うために高密度に分布する、通称「アリューシャンマジック」が起こる。その要因となるのは餌であるオキアミ類Thysanoessa属の高密度分布である。本研究では、この生物学的ホットスポットの構成要因であるThysanoessaの体サイズ組成をZooScanによる画像イメージング解析を行うと共に、これ以外に高密度分布を示す分類群として、有殻翼足類Limacina helicinaが重要であることを明らかにした。 ウニマック水道におけるオキアミ類Thysanoessa属と有殻翼足類Limacina helicinaの密度は、他海域で報告されている値の50-1000倍に相当する。これら両分類群はいずれも比重が重いことにより特徴づけられる分類群である。これらのことは両分類群の高密度分布を形成する要因として、内部波など物理海洋学的要因が存在することを示唆しており、物理海洋学の専門家との共同研究も進行中である。 今年度は、長年動物プランクトン定量採集に用いているノルパックネットの目合いによる採集効率の違いを指摘し、1回のキャストで多数の試料採集が可能な4連ノルパックネットを開発した。これらの成果は、本研究の研究が当初の計画以上に進展していることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により導入した画像解析装置(ZooScan)は短時間に動物プランクトンの画像データに基づく分類群や正確なサイズ組成の解析が可能である。前述のように、本研究の主要な研究対照海域である南東部ベーリング海陸棚域での試料測定には、ある程度の目処が立っている。しかし、同海域で採集された試料は、いずれも夏季におけるもので、季節変化パターンの評価は困難であった。北太平洋亜寒帯域における動物プランクトンの世代時間は1年以上と長い種が多く、一次生産量の季節変化も大きな海域であるため、動物プランクトンサイズ組成の季節変化の評価は、魚類等高次生物の餌環境や、海洋生態系における物質循環を評価する上で重要である。 そのため、南東部ベーリング海陸棚域の対照海域として、北海道南西部噴火湾における、季節的な動物プランクトン時系列採集試料について、ZooScan測定を行い、北太平洋亜寒帯域における動物プランクトンサイズ組成の季節変化パターンを明らかにする予定である。噴火湾では、北海道大学水産学部附属練習船うしお丸による実習航海が行われており、2018年12月~2019年12月にかけて、湾央部定点において時系列採集を実施し、既に周年をカバーする22試料が揃っている。令和2年度はこれら噴火湾における動物プランクトン試料についてZooScan測定を行い、そのサイズ組成の季節変化パターンを評価する。 噴火湾においてはまた、春季植物プランクトンブルームの生産物を利用して、大型カイアシ類が成長する4月~6月にかけて、野外生鮮個体を、4つの水温条件にて飼育し、水温変化が動物プランクトンの成長に与える影響を評価する、成長速度実験も行っている。これら成長速度実験試料もZooScan測定を行い、将来的な気候変動や地球温暖化による水温変化が、動物プランクトンの成長生産にどのような影響を及ぼすかを評価する予定である。
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Remarks |
研究室HPによる、研究成果情報の発信。
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Research Products
(14 results)