2017 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the regulatory mechanism of amino acid metabolism in response to stress
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17H01503
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古瀬 充宏 九州大学, 農学研究院, 教授 (30209176)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 暑熱ストレス / 拘束ストレス / D-アルギニン / L-ロイシン / ニューロペプチドY / タウリン / アンセリン / ミルク |
Outline of Annual Research Achievements |
L-アルギニンは中枢において鎮静・催眠作用を示すが、D-アルギニンはL-アルギニンとは異なり興奮作用を示すことを確認をした。次いで、マウスにD-アルギニンを経口投与したところ、従来のD型アミノ酸の吸収は悪いという報告とは異なり、すばやく血漿濃度が上昇し、大脳皮質や視床下部にも速やかに移行することが判明した。 孵卵中のブロイラーの卵内にL-ロイシンを投与すると、孵化後にオスのヒナは暑熱ストレスに対して耐熱性を示すことが明らかとなった。 ニューロペプチドY(NPY)は暑熱曝露において絶食ヒナに抗ストレス効果を示すが、中枢投与により暑熱曝露時の血漿中のグルコース、トリアシルグリセロール、コルチコステロンおよびエピネフリンを低下させ、血漿タウリンおよびアンセリン濃度を高めることが判明し、これが耐熱性に関与することが示唆された。 一方、授乳期間中の母マウスに対する拘束ストレスは、タウリントランスポーターを介して母体血漿から乳汁中へタウリンの移行を促進する可能性が示唆された。また、乳汁中のタウリン濃度に血漿中のコルチコステロンレベルと正の相関があり、乳汁中のタウリンはストレス状態の指標になることが考えられた。タウリン輸送体はβ-アラニンの輸送にも使用され、タウリンの輸送はβ-アラニンにより制限される。そこでタウリンあるいはβ-アラニンを処理することで、乳汁のタウリン濃度を調節できるかを調査した。乳汁中のタウリン濃度はタウリンを投与しても増加せず、β-アラニンの投与によって減少することが判明した。 妊娠・出産とそれに付随する子育ては、母体に精神的また身体的なストレスをもたらす。鎮静催眠効果が認められるL-セリンを食餌中に添加すると、乳汁中の遊離L-セリンレベルは増加するが、その一方でグルタミン酸、L-アラニン、D-アラニンおよびタウリンレベルは減少することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初掲げていたアミノ酸の代謝に関する研究が申請した備品の納入が11月を過ぎて行われ、計画通りに進展できなかった。そこで、備品が納入されるまでにストレスとアミノ酸代謝の関係に関する研究を他の視点からも遂行した。その結果、5編の学術論文に繋がり、おおむね順調に進展した判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
D-アルギニンが興奮作用を示し、投与後に血漿、大脳皮質や視床下部にも速やかに移行することが明らかになった。そこで、ストレスが起因となり、自発運動量の低下などが指摘されるうつ様行動に対してD-アルギニンが有効であるかを確認する。また、数あるアルギニンの代謝ルートにおいて、ストレスが代謝ルートの選択に影響を及ぼすかについて15Nで標識したアルギニンを用いて検討する。 孵卵中のブロイラーの卵内にL-ロイシンを投与すると、孵化後にオスのブロイラーヒナは暑熱ストレスに対して耐熱性を示すことが明らかとなった。しかし、卵内投与におけるL-ロイシンがアミノ酸代謝および熱ストレス下での細胞ストレス反応のプロセスを変化させるかどうかは依然として不明である。そこで、新生オスブロイラーヒナおよび一部の胚組織における中枢および末梢組織におけるアミノ酸代謝および細胞ストレス応答について調べる予定である。L-ロイシンは哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体(mTOR)シグナルを介して筋肉を増強することが知られているが、L-ロイシンの代謝産物であるβ-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)にも筋肉増強作用が認められているため、HMBがストレス負荷時の異化作用を軽減できるかについても検証を行う。 妊娠・出産とそれに付随する子育ては、母体に精神的また身体的なストレスをもたらす。そこで、鎮静催眠効果が認められるアミノ酸を母親に与えることで、母親自身あるいはミルクを介して仔のストレスが改善されるかを前年度に引き続き調べる。また、妊娠・出産あるいはストレスが母体の行動やアミノ酸代謝に及ぼす影響の調査は行われてきたが、その複合的な影響は調査されてこなかった。したがって、本年度は妊娠・出産が母ラットのストレス応答に及ぼす影響を遊離アミノ酸およびコルチコステロン濃度の測定と行動試験によって総合的に調査を行う。
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Research Products
(14 results)
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[Presentation] L-Leucine in ovo injection stimulates lipid metabolisms and affords thermotolerance in male broiler chicks2017
Author(s)
Han, G., Yang, H., Ikeda, H., Bungo, T., Furuse, M., Chowdhury, V.S.
Organizer
第123回日本畜産学会
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[Presentation] Maternal stress influences the sulfur amino acid levels in milk and the growth of offspring2017
Author(s)
Nishigawa, T., Nagamachi, S., Ikeda, H., Hamada, M., Chowdhury, V.S., Shinobu Yasuo, Furuse, M.
Organizer
第123回日本畜産学会