2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the regulatory mechanism of amino acid metabolism in response to stress
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17H01503
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古瀬 充宏 九州大学, 農学研究院, 教授 (30209176)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アミノ酸 / 暑熱ストレス / ゴナドトロピン抑制ホルモン / 酸化ストレス / ポリフェノール |
Outline of Annual Research Achievements |
暑熱ストレス時に、摂食亢進神経ペプチドであるゴナドトロピン抑制ホルモン(GnIH)のmRNA発現がニワトリヒナの脳で高まることを見出していた。今回はアミノ酸代謝に先立ち、暑熱ストレスにより自発的に摂食が低下する場合と強制的に絶食した場合の影響を調査した。その結果、暑熱ストレスによりヒナの飼料摂取量が自発的に減少した場合には、間脳のGnIH mRNAの発現は増加したが、絶食条件下では変化は認められなかった。 L-ロイシンの卵内投与が雄のブロイラーヒナにおいて耐熱性を与えることを見出してきた。本課題では、主に新生ブロイラーヒナの中枢および末梢組織ならびに一部胚組織におけるアミノ酸代謝と細胞ストレス応答に対するL-ロイシンの卵内投与の影響を調べた。孵化後のヒナを180分間、高温環境(HT:35±1℃)または熱的中性圏(CT:28±1℃)に暴露した。間脳と肝臓のアルギニンはHTで上昇するがL-ロイシンの卵内投与によりその変化を抑えることができた。L-ロイシンの卵内投与により間脳と肝臓のリジンが上昇した。 以前の研究でポリフェノールのフラバンジェノールを投与すると暑熱ストレス下の細胞を保護することが判明した。今回の研究では、フラバンジェノールのアミノ酸代謝に及ぼす影響を見る前に、ニワトリ脳細胞(神経細胞とグリア細胞が混在する細胞)の細胞アポトーシスと酸化に対するフラバンジェノールの効果を調べた。フラバンジェノール処理は、細胞生存率およびBCL-2 mRNA発現を有意に増加させ、そしてHSP-70およびBCL-2関連Xタンパク質mRNA発現を減弱させた。さらに、フラバンジェノール処理は、HT群においてグルタチオンペルオキシダーゼのmRNA発現を上昇させた。フラバンジェノールは、暑熱ストレスによって損傷する細胞において保護的役割を果たす可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は九州大学の完全移転に伴い、5月から動物実験ができない期間が7ヶ月以上続いた。また、移転に伴い一部の分析機器に不具合が生じた。そのために大きな成果を出すことができなかった。それでもストレスに関連した論文を3編公表することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
Neuropeptide Y (NPY)は、暑熱ストレス時に脳内で発現量が高まり、中枢において体温低下作用があることを既に報告し、本課題においても、その作用がNPY-Y5サブ受容体を介することを見出している。しかし、NPYが脳のアミノ酸代謝に及ぼす影響に関しては報告がない。そこで、自由摂食下と絶食下のニワトリヒナの脳室にNPYを投与し、遊離アミノ酸の代謝にどの様な影響がでるかを明らかにする。その中で、変化が大きいアミノ酸が体温調節に関わっている可能性があるため、そのアミノ酸投与による体温変化も確認する。 近年、子供に対する虐待やネグレクトが問題となっている。その原因の一つとして、ストレスからくる母親の産後うつが考えられる。そこで、うつ病のモデルとして広く使われているWistar Kyoto (WKY) ラットを用いて、その遺伝子型が妊娠・出産に与える影響について検討する。WKYラットと正常の対照としてWistar (WIS) ラットを用いる。また、出産後に脳の遊離アミノ酸濃度およびモノアミン濃度の分析も行い、うつ症状および出産が母親に与える影響について総合的に判断をする。また、授乳期に着目し、うつ様行動と相互に関係するストレス反応系及び脳内モノアミンとアミノ酸代謝を総合的に調査する。 オルニチンはタンパク質を構成しないアミノ酸であるが、抗ストレス効果や睡眠に関連する効果をこれまで報告してきた。夜泣き等に代表される乳幼児の睡眠問題は、それが親の慢性的なストレスとなり、睡眠不足や鬱に繋がる可能性があるため、早急に解決されるべき課題である。そこで、母マウスにオルニチンを含む餌を与え、乳汁中へのオルニチン濃度を高めることで、仔マウスの睡眠様行動への影響を検討する。また、ストレスは皮膚の状態を悪化することが知られているが、皮膚の状態に対しオルニチンが有効かを検証する。
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Research Products
(15 results)