2018 Fiscal Year Annual Research Report
Gene regulatory networks underlying 3-D conformational change in genome associated with anhydrobiosis
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17H01511
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
黄川田 隆洋 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (60414900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舟橋 啓 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70324548)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乾燥耐性 / ゲノム構造 / 遺伝子発現調節 / 遺伝子ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
黄川田グループ:平成30年度は、ネムリユスリカ培養細胞の乾燥耐性誘導過程に変動するゲノム高次構造を知る目的で、乾燥状態のPv11細胞をコントロールにin situ HiC解析を行い、昨年度実施した水和状態のPv11細胞でのHiC解析結果と比較した。それと同時に、昨年得た高精度なPv11細胞のゲノム情報に対して、遺伝子モデルとアノテーションを行った。ネムリユスリカ幼虫の乾燥過程での精密な遺伝子プロファイルを得るために、完全乾燥までの48時間で4時間間隔でのmRNA-seqを行った。得られたデータを舟橋グループに提供した。また、ゲノムワイドCRISPRスクリーニング用のガイドRNA発現ライブラリを作製した。同時に、このライブラリを挿入するためのPv11ゲノム上のセーフハーバー領域を探索した。
舟橋グループ:平成30年度はPv11細胞の乾燥後に細胞分裂を再開するために必要な再水和処理後の時系列RNA-seqデータを元に発現変動を示す転写因子を統計解析により検出し、その制御関係をダイナミックベイジアンネットワークモデル及び確率微分方程式モデルを用いて転写因子間の制御関係を推定した。また、近年の研究によりPv11細胞とネムリユスリカ虫体において発現変動を示す遺伝子に違いがあることが報告されたことを受け、本年度はネムリユスリカ虫体における乾燥及び再水和処理後の時系列RNA-seqデータを元に、発現変動を示す転写因子の検出及びそれら転写因子間の制御関係を推定し、Pv11細胞とネムリユスリカ虫体における転写制御関係の類似及び相違点を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
黄川田グループ:昨年度のHi-C実験との比較を行った結果、水和状態と乾燥状態の間で染色体のTADとドメイン構造に大きな差異が認められなかった。ただ、実験回数が多くないため、再現性の有無に議論の余地は残っている。一方、Hi-Cを用いた高精度なゲノム情報に対して、遺伝子モデルの作製とそのアノテーションを進めた。最新の遺伝子モデルでは、17852個の遺伝子がPv11細胞のゲノム上に存在すると予測された。ネムリユスリカ幼虫の乾燥過程の詳細なmRNA-seqは、14タイムポイントで3反復のサンプルで実施した。ゲノムワイドCRISPRで用いるPv11ゲノム内のセーフハーバー領域として、ある高発現遺伝子の下流を選定した。その領域にGFP遺伝子をノックインしても、Pv11細胞の乾燥耐性能力に変化が無い事を確認した。
舟橋グループ:今年度はPv11細胞の時系列RNA-seqデータを用いて再水和後の細胞分裂を再開する過程に関与する転写制御ネットワークの推定に成功した。本成果は平成30年度にロシアにて開催されたLife of Genomes 2018にて報告した。さらにネムリユスリカ虫体における乾燥・再水和時の時系列RNA-seqデータを用いて虫体の転写制御ネットワークの推定を行った。その結果、既にPv11細胞とネムリユスリカ虫体の両方で乾燥耐性に重要とされる遺伝子に加えて、これまで報告されていない2つの新規な転写因子が両者の乾燥耐性に重要である可能性が示唆された。この結果に基づき、Pv11細胞における当該転写因子のうち一つの遺伝子のノックダウン実験を行ったが、ノックダウン効率が不十分だったためか、Pv11細胞の乾燥耐性の失活及び種々の乾燥耐性関連遺伝子の有意な発現変化は確認されなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
黄川田グループ:Hi-C解析の実験回数を増やすことで、再現性の高いデータを得るように努める。また、転写因子ネットーワークに寄与するゲノム流域を特定するために、手始めとして乾燥耐性制御因子として同定済みのHSF1転写因子が結合するサイトをChiP-seqによりゲノムワイドに解析する。また、合成済みのガイドRNA発現ライブラリをセーフハーバー領域に挿入し、ゲノムワイドCRISPRスクリーニングの基盤を開発する。Pv11細胞の高精度ゲノム情報に関しては、遺伝子モデルの妥当性をキュレーションし、最終的な情報開示に向けた解析を深めていく。
舟橋グループ:今年度注目した転写因子に加えて、ネットワーク構造に基づいた重要な転写因子のノックアウト・ノックダウン実験をPv11細胞で行い、乾燥耐性の失活の有無を再水和後蘇生率及び下流遺伝子の発現変化の有無として検証することを計画している。また、これまでの解析に加えて、乾燥耐性に重要な遺伝子群と転写因子間の制御関係を各転写因子の結合モチーフを元に解析することを計画している。これにより、乾燥耐性の形質発現に関わる遺伝子を直接制御する転写因子を明らかにすることができる。平成30年度はPv11細胞及びネムリユスリカ虫体の乾燥耐性獲得及び再水和後の蘇生に関わる転写制御ネットワークの推定を行なったが、今後は転写因子に加えて乾燥耐性形質発現に関わる遺伝子も含めた乾燥耐性遺伝子制御ネットワークの推定、さらにはゲノム構造変化に伴う乾燥無代謝休眠時特異的な遺伝子制御ネットワークの推定を行う。
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Research Products
(10 results)