2019 Fiscal Year Annual Research Report
Gene regulatory networks underlying 3-D conformational change in genome associated with anhydrobiosis
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17H01511
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
黄川田 隆洋 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主席研究員 (60414900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舟橋 啓 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70324548)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乾燥耐性 / ゲノム構造 / 遺伝子発現調節 / 遺伝子ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
<黄川田グループ> 令和元年度は、高次構造を含めたPv11細胞のゲノム情報をデータベース化することに着手した。また、Pv11細胞のゲノム上に存在するセーフハーバー領域の有用性を調べる基盤作りを行った。具体的には、Pv11細胞で駆動しうる高発現プロモーターを同定し、一過発現および安定発現系でタンパク質発現が出来るか調査した。その結果、121と命名したプロモーターを発見し、既存の昆虫細胞発現用プロモーターと同程度もしくはより高い転写活性を示すことが明らかとなった。
<舟橋グループ> 令和元年度はこれまでに行なってきたPv11細胞の転写因子間の制御関係である転写制御ネットワークに加えて、これらの転写因子から乾燥耐性を発揮する上で必要な遺伝子群への制御関係の推定に基づく包括的な遺伝子制御ネットワークの推定を完了した。さらに、この推定した遺伝子制御ネットワークから乾燥耐性を持たないショウジョウバエの公知の遺伝子制御ネットワークを差し引きすることで、乾燥耐性特異的な遺伝子制御ネットワークの抽出に成功した。この遺伝子制御ネットワークの抽出により1) 乾燥耐性関連遺伝子全体の発現制御を行う転写因子として、植物の乾燥耐性で重要な役割を担うことが報告されている転写因子NF-YCの推定、2) 乾燥しても死なないための遺伝子群をONにする複数のフィードフォワードループ制御と、それらの間で構成されるポジティブフィードバック制御に基づく遺伝子制御システムの推定を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<黄川田グループ> 令和元年度の主な成果として、ネムリユスリカのゲノム研究を進める過程で、強力なプロモーターを発見したことがあげられる。「121」と名付けたこのプロモーターは、昆虫細胞用の市販キットに含まれるプロモーターと比べて、タンパク質を作り出す能力が約1,500倍高いことがわかった。121プロモーターを利用することで、Pv11細胞を物質生産の場として使えるようになった。また121プロモーターは、ショウジョウバエ、カイコなどネムリユスリカ以外の昆虫の細胞でも、強力に働くことが分かった。本成果は、"合成"と"保存"を両立する効率的な有用物質生産系の構築に貢献すると期待されます。本成果は、学術雑誌Scientific Reportsにて論文として掲載された。
<舟橋グループ> 令和元年度はPv11細胞の全転写因子のゲノム上での結合領域の予測と結合予測箇所における転写因子とその結合領域下流に存在する遺伝子の時系列発現のGranger因果を検定することで、転写因子とターゲットとなる遺伝子間の制御関係の推定を達成した。さらに乾燥耐性を持たないショウジョウバエとの比較解析を行うことで、Pv11細胞の乾燥耐性に決定的な転写因子NF-YCおよび乾燥耐性関連遺伝子のON/OFF遺伝子制御システムの推定に成功した。平成30年度の成果と本成果は、令和元年度に学術雑誌PLOS ONEにて論文として掲載された。さらに平成30年度より開始したネムリユスリカ虫体に対する遺伝子制御ネットワークの推定も引き続き行い、Pv11細胞の遺伝子制御ネットワークとの共通点としてNF-Yを構成する転写因子が主要な役割を担う可能性を示した。当該成果を令和元年度にロシアにて開催されたMCCMBにて報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
<黄川田グループ> 昨年度計画の積み残しの研究を進める。転写因子ネットワークに寄与するゲノム流域を特定するために、手始めとして乾燥耐性制御因子として同定済みのHSF1転写因子が結合するサイトをChiP-seqによりゲノムワイドに解析する。同時に舟橋グループが同定したネットワーク上流に存在する転写因子の機能解析を、共同して進める。また、合成済みのガイドRNA発現ライブラリをセーフハーバー領域に挿入し、ゲノムワイドCRISPRスクリーニングの基盤を開発する。Pv11細胞の高精度ゲノム情報に関しては、完全長cDNAライブラリを用いたRNA-seqを用いた遺伝子アノテーションを行い、最終的な情報開示に向けた解析を深めていく。
<舟橋グループ> 令和元年度に得られた乾燥耐性を発揮する上で決定的と考えられたNF-YCを含むシステム構成転写因子のノックダウン実験をPv11細胞で行い、乾燥耐性の失活を再水和後蘇生率及び下流乾燥耐性関連遺伝子の発現変化の有無として検証することを計画している。また、Pv11細胞に対するRNA-seqデータ解析より、再水和時にミトコンドリア由来転写物の顕著な転写が新規に発見されたことを受け、これまでの核内ゲノムに基づく解析に加えて、ミトコンドリアゲノムにおける遺伝子制御ネットワークの推定を計画している。この計画が達成されることで、能動的にミトコンドリアを利用したエネルギーを充填して生き返るためのシステムを明らかにできる。令和元年度は核内ゲノムにおける包括的な遺伝子制御ネットワークの推定を行ったが、今後は再水和時の生き返るメカニズムの解明に向けてミトコンドリアゲノムも含めたさらなる乾燥耐性を構成するシステムの推定を行う。
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Research Products
(9 results)