2019 Fiscal Year Annual Research Report
Methane fermentation of inedible biomass by highly concentrated and compacted functional rumen microbial communities
Project/Area Number |
17H01512
|
Research Institution | Niigata Agro-Food University |
Principal Investigator |
中井 裕 新潟食料農業大学, 食料産業学科, 教授 (80155655)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多田 千佳 東北大学, 農学研究科, 准教授 (30413892)
福田 康弘 東北大学, 農学研究科, 助教 (50527794)
馬場 保徳 石川県立大学, 生物資源環境学部, 助教 (70747823)
阿部 憲一 新潟食料農業大学, 食料産業学科, 講師 (80618835)
浅野 亮樹 新潟食料農業大学, 食料産業学科, 講師 (20646137)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | メタン / ルーメン微生物 / バイオマス / メタゲノム / セルラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
世界の穀物残さは 517 百万トンにのぼり,エネルギー化等のそれらの有効活用が求められる.我々は食肉処理場で廃棄されている牛のルーメン(第一胃)液に着目し,これを活用することで草本系バイオマスのリグノセルロース分解効率を高めたルーメン・ハイブリッド型メタン発酵システムを開発した.このシステムはまず草本系バイオマスに牛ルーメン液を混合,保温して植物繊維構成多糖類を分解し(ルーメン処理),その後この混合物をメタン発酵するシステムである.今後,実用化に向け,ルーメン液のコンパクト化と同時にルーメン由来微生物や酵素がルーメン処理とメタン発酵処理の両過程で高い活性を維持することが求められている.しかし,ルーメン・メタン発酵の両条件下で高いリグノセルロース分解活性をもつルーメン微生物は未だに同定されておらず,また分解酵素であるリグノセルラーゼの動態も不明である.そこで本科研費研究では,微生物の顕微鏡観察・網羅的遺伝子解析・リグノセルロース分解酵素活性・ガス化効率を総合的に評価しながら,本システム過程において高リグノセルロース分解活性をもつ微生物の特定し,それらを指標としてルーメン液を高密度コンパクト化することを試みる.本年度の研究では,ルーメンから得られた微生物をより有効に利用するため,従前よりも長期間にわたってルーメン微生物を利用できるシステムを構築し,そのシステム中のセルラーゼ活性がどの程度維持できるかを調査した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度もルーメン処理に寄与する繊維分解酵素に注目して,繊維分解酵素の挙動,またそれら酵素を発現する微生物種の同定に取り組んだ(課題1).またルーメン処理とメタン発酵処理の両過程における微生物群集構造の動態を解析にした(課題2). 課題1)高活性繊維分解酵素とそれを発現する微生物の同定 すでに我々は繊維分解酵素の一つセルラーゼに着目し,ルーメン処理へ寄与する酵素をザイモグラムで解析している.その結果,複数のセルラーゼが高い繊維分解活性をもち,またルーメン処理の経過とともに高活性セルラーゼの分子種が遷移することを明らかにしてきた.投入されたルーメン内容物を長期的に利用することを想定して,回分的なルーメン処理による植物繊維の分解,また回分処理中のセルラーゼ活性の変遷を調べた.その結果,ルーメン内容物を投入することなく処理を続けても,セルラーゼ活性は1か月以上も維持されることが新たに明らかになった. 課題2)リグノセルロース分解微生物の群集構造解析 本年度の研究では,ルーメン処理において植物細胞壁分解に寄与する微生物種の知見が大きく発展した(Lee et al. 2020., Takizawa et al., 2020).特筆すべき点は,高活性セルラーゼをコードする遺伝子と考えられる配列やそれをもつ分解微生物の検出である.さらにルーメン発酵にて揮発性脂肪酸(メタン発酵の基質となる)の生産とセルロース分解微生物の配列も検出されており,セルロース分解微生物がメタン発酵の基質供与に寄与することも示された.これらの結果から,後段のメタン発酵の条件によっては,メタン生成菌の機能的不全による揮発性脂肪酸の蓄積が起こることが確認された.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果に基づく発展的解析を目的として,以下の課題を進める. 課題1)高活性セルロース分解酵素とそれを発現する微生物の同定 高活性セルロース分解酵素とそれを発現する微生物の同定を目的として,昨年度に特定された高活性セルラーゼの質量分析とメタゲノム解析を進める.これらにより高活性セルラーゼを発現する微生物種を同定し,その高活性セルラーゼの遺伝子や生化学的特徴を明らかにする. 課題2)リグノセルロース分解微生物の群集構造解析 ルーメン液の濃縮は重要な達成目標であり,その指標として応用できるリグノセルロース分解微生物を選定する.また進めてきたメタゲノムリードのアノテーションを継続し,各々の処理における酵素や機能性微生物の解析を行う.
|