2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H01519
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
深水 昭吉 筑波大学, 生命領域学際研究センター, 教授 (60199172)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メチル化 / RNA / 寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 線虫の加齢に伴い、細胞内のメチオニン量とS-アデノシルホモシステイン量は顕著に減少したのに対し、SAM量は大きく増加するという結果を得た。また線虫のリボソームRNAとtRNAに存在するメチル化ヌクレオシドをLC-MS/MS分析することで、メチル化様式の網羅的に検出・定量する系を確立した。現在、栄養環境の変化や寿命調節に関わるRNAメチル化酵素のKD線虫におけるメチル化動態を解析中である。 (2) 線虫個体およびマウスの組織を用いたリボソーマルプロファイリングを行うため、RPF (Ribosome protected fragment)の調整法を確立した。RNA sequenceの結果と比較することで、網羅的な遺伝子転写・翻訳解析に着手している。また線虫にメチオニンの安定同位体を用いたin vivoにおけるタンパク質合成評価系を開発し、翻訳制御因子であるrsks-1のKDによって、新規タンパク質合成が低下することを確認した。現在、寿命調節に関わるRNAメチル化酵素のKD線虫を解析対象とすることで、RNAメチル化・翻訳・寿命の3者の関係性を検証している。 (3) 線虫の老化レベルを評価する系として、単位時間あたりの移動距離を動画解析で定量化する方法を確立した。また長寿変異体の加齢と運動活性の相関を調べることで、健康寿命という観点から線虫寿命を再評価するシステムを整備した。一方で、ゲノム編集技術によりW02A11.1遺伝子KO線虫の樹立を試み、部分的な遺伝子欠失変異体を樹立した。現在、この系統のRNAメチル化レベルや寿命を測定している。 (4) 線虫のT07A9.8遺伝子が28S rRNAのm1Aメチル化を担う一方で、pre-rRNAの転写には関与しないことを明らかにし、論文報告した (J. Biochem. 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 線虫やマウス組織からのtRNAとrRNAの調製方法、および網羅的・部位特異的なメチル化検出方法は確立している。また線虫において寿命延長をもたらす栄養制限の実験系も確立しており、栄養・RNAメチル化・寿命をつなぐメカニズムの評価系は整った。 (2) tRNAとrRNAのメチル化が翻訳の効率や選択性に与える影響を評価 線虫やマウスからのリボソーム画分の調整法を確立し、リボソームの形態異常を生化学的に観察することが可能になった。またリボソーマル・ポリソームプロファイリング法を確立したことで、tRNAとrRNAのメチル化酵素が、翻訳の選択性に与える影響を評価できる段階に至った。 (3) tRNAメチル化酵素であるW02A11.1遺伝子に加え、同メチル化部位の脱メチル化酵素と考える遺伝子について、RNAiによるメチル化や寿命餌の影響を検証している。さらに同遺伝子の過剰発現線虫やゲノム編集技術によるKO線虫の樹立にも着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) SAMはほぼ全てのメチル化反応におけるメチル基供与体であるが、ホモシステインからメチオニンができる反応においてのみ、SAMではなくグリシンベタイン(魚介類に多い)とS-メチルメチオニン(キャベツに多い)がメチル基供与体となることが知られている。そこでこれらを線虫の培地やマウスの食餌に添加することで、RNAのメチル化に与える影響を調べる。また細胞内のエネルギーレベルを情報に変換する酵素であるAMPKが、tRNAメチル化酵素をリン酸化する可能性について検証する。 (2) 前年度に引き続き、リボソーマル・ポリソームプロファイリング法を利用して、食餌制限下においた線虫およびマウスの翻訳効率や選択性の解析を進める。また線虫のtRNAやrRNAのメチル化酵素について、KD線虫を用いてリボソーマル・ポリソームプロファイリングを行う。 (3) W02A11.1遺伝子の寿命調節経路を遺伝学的に明らかにするため、既存の長寿変異体であるdaf-2やife-2に対してW02A11.1遺伝子のKDを行い、寿命や老化指標を評価する。
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Research Products
(25 results)